この熱は誰の所為?






誠凛高校の体育館裏。

私は、とんでもない出会いをしてしまった。それは…




『もふもふさん!』

「わう?」




この究極的に可愛いワンコ!
何この毛玉ちゃんの愛らしさは!私をキュン死させるつもりなんですかね!




『もふもふさん、可愛い!今日も可愛い!特にお目々が可愛いね!』

「わふっ」

『もう、もふもふさんが人間だったら、速攻で恋に落ちちゃうよ』




これがここ最近の私の口癖。
もふもふさんの喉やお腹を撫で回しながら、それはもう、どうしようも無いくらいにデレきった顔をしていることだろう。あまり他の人には見せられるものじゃないなと思いつつ、本当に胸キュンが死因になりそうな勢いでもふもふさんを堪能する日々を送っていた。


けれどもある日、もふもふさんはおらず、もふもふさんの定位置と化していた場所には一人の男の子が立っているだけだった。

あの人がいるから、もふもふさんは警戒して出てこれないのかな?
なら、今日は諦めよう…

そう決め、踵を返そうとした瞬間、男の子が振り返った。

パチリと音が聞こえてきそうなくらいに目が合うと、男の子はふわっと笑った。



「なまえさん…やっと会えた」

『え、』




何故か彼から目を逸らすことが出来ない。

ゆっくり近付いてくる彼とは対照的に、私の身体はピタリと固まっている。




「こうやって、なまえさんとお話したかったんです」




目の前で止まった彼の瞳に、もふもふさんがダブって見えた。

いや、ダブっているどころか、そのものに見える。
目の前の彼=もふもふさん…って、もふもふさんが人間になるだなんて、現実にはありえないし。


……そうだよ、現実じゃないんだ、これ。


夢なんだ!


私はきっと、今教室の机に突っ伏して寝ているに違いない。


だとしたら、なんて願望にまみれた、ある意味幸せな夢なんだろう。




「いつも構ってくれているお礼を言いたかった…」

『お礼だなんて、そんな!』

「いつもありがとうございます」




彼は微笑みながら私の手をギュッと握った。

その様があまりにも似合っていて、まるで絵本か何かの王子様みたいで…

凄いファンタジーな夢にしては、なんてリアルな暖かさなんだろうか。手も心も、ポカポカして心地良い。


ただボーッと見つめることしか出来ていなかった。


遠くから微かに聞こえてくる叫び声のようなもの…もしかして、現実の私が呼ばれてる?

起きる時間?


叫び声はだんだんとハッキリしてきた。そしてしっかり聞き取れたのは…




「っ来るんじゃねぇーーーっ!!」




男の子の絶叫。


思わず声の方へ振り向くと、背の高い赤髪の男の子が何かに追いかけられて、こっちに…って、あれ、男の子を追いかけてるのって…もふもふさん!?




「っ、く、黒子!やっと見つけた!」

『えっと…?く、ろこ…』




赤髪の彼の視線の先は、間違いなく私の手を握る彼。

恐る恐る顔を元の方向へ戻す。




「黒子はボクです」




そして足元で座っていたもふもふさんを腕に抱え込み、私の方へ出す。




「こっちはテツヤ2号です」




一瞬思考停止していたものの、もふもふさん…基、テツヤ2号の鳴き声に我に返る。

その瞬間、顔が一気に熱くなった。だって、だってだってだって…!!


さっきまでの私、なんて痛い考えしてたの!ってか、自分で言うのもなんだけど、痛すぎる!!!




『っも、もふもふさん、テツヤ2号っていうのね』

「わふっ」

『そ、そうなんだ!…あ、そういえば二人とも部活なんでしょ?もう行かないとじゃない?』

「そうだった!早く行くぞ黒子!お前は…」

『わ、私はもう帰るから!じゃあ!』




早口で述べてダッシュでその場から離れた。

もう一秒だって耐えられないから!


未だ熱い頬を抑えながら、兎に角走ることに集中しようとした。



この熱は誰の所為?

((ただ勘違いが恥ずかしかったから…だよね?))


(なんか、逃げるように帰ってったな)
(逃げるように…というより、逃げたんですよ)
(は?何で?)
(恥ずかしさでいっぱいだったからじゃないですか?)
(はぁ?訳わかんねぇ…)
(とりあえず、作戦通りです)
(…作戦?)
(すいません、こっちの話です)

End
ーーーーーーー

黒子の可愛さは、狙ってるんでしょうか…

この小説の黒子は狙ってますね。なんてったって、お腹真っ黒子…

タイトルは『確かに恋だった』様よりお借りしました。

2016.2.23

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