いやです、許しません






※『終止符を打ちたくて』続編


黒子Side






「……あった」




机の中にキチンと畳まれたまま入っていたプリント。

本来ならば、ファイルに入れ、鞄にしまうはずが、何を思ったのかそのまま机に入れていた。
そのことをスッカリ忘れていたのだが…まさか火神くんに指摘されて気付くなんて。





「…これで提出し忘れでもしていたら…」





自分で言って、背筋がゾッとする。

成績に影響があれば、それは部活へと響き、確実にカントクの制裁が待っているだろう。


早く戻らないと。気の早い彼らのことだ。もうアップを始めているかも…


急く気持ちをそのままに、机からはなれて、体を扉へと向ける。




「……みょうじ、さん」

『く、黒子くん…!』




その扉の前…廊下には、僕の想い人が立っていた。


どうしてここに?

珍しいですね、みょうじさんも忘れ物ですか?


そんな疑問を言えばいいのに。





「火神くんなら、部活に行きましたよ」




僕の口をついて出た言葉は、自分で自分の首を締めるそれで。




『違う、黒子くんと話したくて…!』

「?…いつも火神くんに話しかけているのに、ですか?」

『それは!く、黒子くんとは、その…は、恥ずかし、くて…』





ぐるぐる目を回しているかのようななまえさん。

顔を紅く染め、言葉尻がどんどん小さくなっていくなまえさんを、僕は初めて見た。





「僕のことが苦手だとか…嫌い、とかではなく?」

『そんなことない!だって、だって私、黒子くんのことが好…っ!!』





羞恥のあまりか、それとも自身が口走りかけた言葉に驚いてか、時間が止まったかのように固まるなまえさんに、全てがカチリとはまったような音が頭の中で響いた。そしてそれは、僕の悪戯心を刺激するのだ。


ずっと勘違いしていたのは、僕だ。


ずっと、なまえさんが見つめていたのは火神くんだと。


ずっと、なまえさんが僕らに挨拶をするのは、火神くんと話すためなのだと。


ずっと、なまえさんは火神くんのことが、好き、なのだと。



……けれど、その全てが違った。


そう思い込んでいただけだった。

そう気付いた瞬間、僕は自分の勘違いを棚に上げて、八つ当たりめいた悪戯をする。





「……もしかしたらみょうじさんに嫌われてるのかと思ってました」

『ご、ごめんなさい、誤解させて』





僕の言葉に、シュンとして俯くなまえさん。

ああ、なんて可愛いんだろう。

そんな表情にさせているのが自分なのだと思うと、満たされた気分になる。柔らかななまえさんの髪に触れ、頭を撫でる。

そっと、顔を上げた彼女に笑いかければ、つられたように笑ってくれた。


笑顔をそのままに、僕はなまえの耳元に顔を寄せると、そっと囁いた。





いやです、許しません

(えっ…!)
(なのでなまえさん、僕の恋人になってください)
(ふぇ!?)
((真っ赤になって…可愛い))

End
ーーーーーーー
実は全て火神くんの策…又は、予期せぬ偶然か←
(深く考えてない)

爽やかにするつもりが、真っ黒子様がご降臨してしまった…

2015.8.29

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