終止符を打ちたくて
『お、おはよう、火神くん、黒子くん!』
「おう」
「…おはようございます、みょうじさん」
僕ら二人に挨拶するみょうじなまえさん。隣の席というわけでもなく、彼女は同じクラスメイトとして声をかけてくれる。忘れられがちな僕を態々探しては、笑顔を見せてくれる…
そんな彼女からの朝の挨拶は、嬉しくもあり、辛かった。何故なら…
『あ、それでね、火神くん…』
彼女は決まって火神くんに話し掛けるから。
和やかに会話する二人を見ていたくなくて、僕は机に突っ伏す。それでも、彼女の…なまえさんの凛とした声に耳を傾けずにはいられない。
なまえさんは、火神くんが好きなのだろうか…
愚問過ぎて溜め息が出た。
『…黒子くん、どうしたの?』
「えっ」
突然名前を呼ばれて、ガバッと頭を上げる。
鼻の先に触れそうな距離に、どこか心配気ななまえさんがいて…
「っ、みょうじ、さん…何が、ですか?」
『何がって…黒子くん、溜め息付いてて、元気が無いみたいだったから…』
「…どうした黒子、腹でも減ったのか?」
『火神くんじゃあるまいし…』
「んなっ!?」
平静を装うが、正直とてもドキドキしている。危うくなまえさん、と呼ぶところだった。
『何かあったらいつでも言ってね!』
「お前じゃきっと頼りにならねーよ」
『ひどい!!』
僕に向けられていたはずのなまえさんの視線は、あっという間に火神くんに向いていて。
むくれるなまえさんを笑いながらからかう火神くんは、彼女の頭に手を置いてクシャクシャとかき回す。
やめて!と怒っているものの、全力で嫌がるわけでもないなまえさん。
二人のやり取り一つ一つに、可笑しくて笑いたくなると同時に、ツキンと胸が苦しくなる。
だけど…
「多分火神くんの方が頼りにならないかと…」
「んだと!?」
『ふ、ははっ』
「っ笑うなみょうじ!」
だけど、この日常はあたたかくて、ホッとして…ずっとこのままでいたいと思ってしまう。
けれどいつまでもモヤモヤするこの気持ちが付きまとうから…
終止符を打ちたくて
それでも弱い僕は、まだいいかなって思ってしまう
End
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黒子の気持ちが爆発しそうでしない話。
2014.12.09
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