強く手を握る
※ほのぼの甘く
※現パロ
サスケSide
「サスケくん、サスケくん!」
ただ郵便受けを見に行っていたはずのサクラが、妙なテンションで部屋に戻って来た。
「どうしたサクラ?」
「これ見て!」
興奮気味に差し出されたのは、一枚のチラシ。
「公園に移動式の動物園が来てるんだって!」
「動物園?」
チラシを受け取って目を走らせる。
ポップな字体とデフォルメされた動物が描かれた、所謂、ふれあい動物園の宣伝広告だ。
そういえば最近、ニュース番組で見た気がするな…と考えながら暫く見ていたら、いつの間にか、傍らにいるサクラが静かになっていた。
不思議に思い、ふと視線を上げ伺い見れば、さっきまでキラキラしていた瞳が陰っていて。
全くこいつは…ため息をつきながら立ち上がれば、サクラはピクッと肩を揺らした。
サクラの横を通り過ぎ、ハンガーに掛けていた上着に腕を通す。
携帯と財布、鍵をポケットに入れる。
「何処か出かけるの?」
「行かないのか?」
「え?」
「動物園」
目を見開くサクラについ、悪戯心が擽られる。
「…行きたくないのか?」
「!行きたい!」
首をこれでもかというほど左右に振ってから、力強い返事をするサクラだが、その瞳は未だ不安気な色が残る。
「でも、いいの?」
「何がだ?」
「こういう所、あんまり好きじゃないのかなって」
「確かに一人で行くのはごめんだが…お前となら、俺は何処へでも行きたいんだ」
「そ、そっか…」
恥ずかしそうに赤く染まった顔は、段々とニコニコとしたものへ。
その顔に、自分の口角もつられて上がっているのがわかる。
サクラはいつも第一に俺のことを考えてくれる。
そのため、自分からあまり我儘を言わない。さっきも突然静かになったのは、俺のことを考えてのことだろう。
「ほら、さっさと準備しろ」
「うん!」
どんな動物がいるか、楽しみ!と、準備をするサクラ。
俺は動物と触れ合っている時のサクラが、どんな顔をするのかが楽しみだ…と思っていることは教えるつもりは無い。
***
「結構楽しかったな」
「うん!」
特にリスザルが可愛かった!すごい頭も良かったし!
普段触れない動物も触れたし!
いい体験が沢山出来たと、次々に思い出しては、興奮冷めやらぬ勢いで語るサクラ。
彼女の横顔をぼんやりと見ていた。
だから、だろうか…
「俺もサクラをあんな風に檻に閉じ込めたり、リードを付けておけたら安心なんだが……」
「それって、どういう意味?」
ただのつぶやきのつもりが、バッチリ聞かれていたようだ。
「……言葉通りの意味だ」
何でも無いように返したが、サクラはじっとこちらを見つめてくる。
俺は観念して、思ったことを言うことにした。
「時々、どうしようも無く本当の意味で束縛してやりたくなるんだ。不安でたまらないからな。だが…」
自然と歩みが止まる。
俺につられるようにして止まるサクラは、どこか驚いているようだ。
それもそうかもしれない。
普段、こんな事は一切言わないし、感じさせることも無いだろうからな。当然、これは意識掛けていることだ。
そっと右手をサクラの頬に添える。あたたかくて、柔らかい…
「そんなことしたら、傷付くのは目に見えてる。だから…」
右手を離した瞬間、何処か名残惜しそうな顔をするサクラに嬉しくて、口角が上がるのがわかる。
右手はサクラの左手を掴むと、絡めるように握り込んだ。
いわゆる、恋人繋ぎというやつだ。
そのまま、目の高さまで持ち上げると、サクラの目を見詰めたまま、サクラの手に一つ口付けた。
「これで我慢だな」
だからその変わり
強く手を握る
この気持ちが伝わるように
(サスケ、くん…っ!)
(絶対離してやらないからな)
(わ、私だって!)
End
ーーーーーーー
あお様のリクエストにおこたえして、「疲れが癒されるようなサスケとサクラのお話」…の、つもりです。(^^;;
のんびりほの甘のつもりが、まさかの急展開シリアス要素に…
着地が微妙…
2017.2.15
[ 1/7 ][*prev] [next#]
[ mokuji]
[しおりを挟む]