背中を押される






なまえ先輩とケンカした。今思えば、めっちゃどうでもええことで。



ただの先輩ならよかったんに…

ただの部活のマネージャーと後輩の関係ならよかったんや…




けど、なまえ先輩はオレの彼女や。



東京もんの先輩とオレとなんて、はなっから釣り合うわけなかったんや。


せやけど、関西人にしてはサバサバしとるオレと合わせられる人は、なまえ先輩しか居らん気もする。



相反する考えがオレを板挟みにして、かなりイラついとった。







「いったぁー!?!?」

「……ああ、すんません。先輩居ったの気付かんくて」

「分かっとってオレの後頭部にショット打ち込んだやろ!?」

「……オレ、ホンマうざったいひよこ頭やな思て、態々貴重な労力を使えるほど、出来た人間やないんで」

「それが本音か!!」





ギャーギャー煩かったのか、部長が眉間に皺寄せてオレらの所に来はった。





「謙也、無駄に騒がしいで。あと財前、口の利き方に気つけなさい。こんなんでも一応、謙也は先輩なんやで?」

「おぉい、白石!一応てなんや!ちゃんと先輩やわ!!」






部長の後ろの方を見ると、部員がタオルで汗拭いとったり、ドリンク飲んどったり…


せっせと部員にタオルやらドリンクやらを配ったり回収したりしとるなまえ先輩の笑顔に、胸がチクっとした気して目を逸らす。


気付かんうちに休憩になっとったんか、それとも態々休憩にしたんか…オレには分からん。


後者やったら、正直言うて罪悪感はある。それと、部長はほんまお人好しやとも思う。






「んで、財前が機嫌悪いんは、なまえとのケンカが原因か?」

「っ、」

「財前、なまえのこと毎日避けとるらしいな。『このままじゃ光と自然消滅しちゃう!』言うて、なまえは必死になっとんのにな」

「……何が言いたいんスか」





睨んでも何も反応せんと、ワザとらしくため息をつく部長にイラっとする。

オレが不調なのに気付いてこっちに来たんやないん?

お人好しや言うても、それはオレにやのーて、なまえ先輩のためやったんか。


せやからって、人の気も知らへんくせに、何なんこん人は?

オレらの問題なんやで、これは。






「今動かんかったら、ほんまに自然消滅やで?それでもええんか?」

「白石の言う通りやで、財前!なまえんこと、財前と付き合うとるって知ってても、財前から奪ったろ考えとる奴、めっちゃ居るハズやで!?」

「せや。今ここで別れてもうたら、他の奴に取られて、もう二度と手には入らん…そうは思わへんのか?」






畳み掛けるように突き刺さる言葉のトゲ。

全部…全部分かっとる。


自分でも、アホちゃうか?って思うくらい考えとったことやから。


何時の間にか俯いとったから、ラケットを震えながらギリギリ握り締める手が見えて、情けなくなってしゃーない。




「まぁ、オレとしてはその方がええけどな…正面切って財前からなまえを掻っ攫わんくて済みそうやし」

「なっ!」





何言うてんねん!

そう思て部長を見るけど、目が笑ってへん。

部長になまえ先輩を取られる…


過ぎった考えを頭を振って消す。そんなん、オレが許さへん。

なまえ先輩は誰にも渡せられへん…!





「ほら、わかったら早よう行き!」





オレの後ろにまわって背中をど突く部長は、ケラケラ笑っとって…

読心術使えるんと違うか?

なんてアホなこと思えるくらい余裕が出てきた。






「……なまえ先輩を他の誰かに譲れるほど、大人やないんで…行ってきます」

「おん!ええ報告待っとるからな!」






練習中やのに上の空やったからか、妙に残っとった体力を使て走る。


ホンマにふざけた先輩らやって思うけど、感謝しとる。

まあ、言うたら言うたでオレらしくない思われんのも癪なんで絶対教えんけど。




背中を押される

その勢いで、一秒でも早く君に触れられたらいいのに




(あないな嘘までついて部員を鼓舞する…さすが部長やな!)
(嘘?)
(財前からなまえを攫うとか…なまえのことが好きみたいな事言うとったやん。アレ、財前の為やろ?)
(……アレ、マジなんやけど?)
(………ほんまに?)

End
ーーーーーーー

なまえさんの出演ほぼ皆無って…。
財前とのケンカ原因は不明←

素敵な作品をくださったマティーニさんに捧げます!

駄文過ぎて泣きそう…

2014.02.25

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