返品不可のプレゼント
「……どうして?」
誰一人としていない放課後の教室で呟いた声は、嫌に響いた。窓から外を眺めている彼女、なまえはここ、氷帝学園にあるテニス部のマネージャー。今の時間帯、本来ならば友達の詩穂と共にマネ業に勤しんでいるはずであった。
しかし、なまえは教室から出れないでいた。
何故か。それは、今日の
昼休みのこと…
購買部からの帰り道、たまたま、話し声が聞こえてきた。そこは、普段あまり生徒が通ることの少ない廊下だと分かっていたために、なまえの好奇心や興味は刺激された。
そっと覗いて見ると、男女の影が。
きゃー、告白!?
と興味本位で耳をそばだてたのがいけなかったのかもしれない。
「…え、うそ…」
そこにいたのは、友達の詩穂から手紙を受け取る、想い人の跡部だった。
前に、自分の想い人は跡部だとなまえは詩穂に話していた。その時に詩穂は確かに「応援するね!」と言ってくれたのだ。
だが、今目の前に広がる光景は、可愛らしい手紙を渡す詩穂と、どこか、はにかんだ笑顔でそれを受け取る跡部。
ハッキリ認識した瞬間、なまえはその場を離れた。
一方的に見たとはいえ、やはりどう顔を合わせたらよいか分からなくなったなまえは、部活に行けずじまいなのだ。
「…もしかして、私、いらない…?」
部活開始からかなり経っているにも関わらず、誰一人としてなまえの携帯への連絡もなく、探している様子もない。
それに、跡部と詩穂のことを考えての、なまえの何気なくでてしまった一言だった。
「アーン?何言ってんだ、お前」
「…え」
だから、それに答える声がくるとは、思いも寄らなかった。
「部活は…?」
「今日はねーよ」
「……私、知らない」
「ああ、今言ったからな。部員と詩穂はもう帰ってると思うぜ」
ほら、皆知ってて、私だけ知らないなんて…やっぱり私は、もういらない…?
なまえはそっと俯くと、震える声で聞いた。
「…詩穂と帰らなくていいの?」
「詩穂と帰る?」
「だって、付き合ってるんでしょ?」
「……は?」
跡部の声音に幾分か怒気が混じった。それでも、なまえは顔を上げてから続けた。
「だって、お昼に詩穂から手紙貰って、嬉しそうだったから…!」
「!お前…見てたのか?」
「…うん」
「……」
どこか難しい顔をした跡部。
顎に指を添えて何やら考え込むと、何を思ったのか、一つ深い溜め息をついた。そして、ブレザーのポケットから取り出したものをなまえに突きつける。
「…え」
「読め」
薄い桜色の封筒に、なまえは目を見開く。
それは間違いなく、詩穂が跡部に渡していた、あの手紙だったからだ。
「これは俺様宛じゃない。なまえ宛だ」
「わ、たし…?」
「ああ」
跡部の手からそっと手紙を貰うと、なまえは緊張した面持ちで封筒を開く。
ーーー
なまえへ
誕生日おめでとう!
本当は直接言いたかったんだけど、それじゃ、サプライズにならないからね…
これをなまえが読んでるってことは、クラスとテニス部の皆、協力のもとの計画が成功したってことかな?
それと、私からの誕生日プレゼント、喜んでもらえたかな?
跡部になまえを取られるのは嫌なので、私からなまえに跡部をプレゼントします!ってね♪
あ、返品は不可だから。
そこんとこシクヨロ☆
これからも一緒に、マネ業頑張ろうね!
なまえの自称親友、詩穂より
ーーー
「……こ、これ!?」
「そういうワケだ。まあ、俺様という贈り物、受け取らないなんてことはないよな?」
「っ、うん!!」
返品不可のプレゼント
笑顔で答えた瞬間、なまえは跡部の腕の中。
「そういえば今日、私の誕生日だった」
「なまえのそういう少し抜けてるとこ、好きだぜ?」
「っ、耳元で言わないで!!」
(プレゼントが跡部部長…)
(うん、なまえなら喜んでくれると思って。…でも、跡部なんか返品されたら…うっぷ…)
(おい詩穂、大丈夫か!?)
(今頃なまえと跡部はイチャイチャしてんだろーな、クソクソ!)
(この貸しはデカイでぇ、跡部…)
後日、テニス部総出のなまえ誕生日パーティーが行われたとさ。
End
ーーーーーーー
きょーこさん、ハピバ!!
*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
誕プレとしてあげちゃうよ!
(ちゃっちい誕プレですみません…)
2013.11.18
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[ mokuji]
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