好き過ぎて勘違いしてB






「ちょっと、グレイ!?はなし…」

「無理」





しっかり抱きしめられたせいで、逃げ出すことはおろか、反抗すら出来そうにないルーシィは、ただグレイを見つめることしか出来なかった。
その目は、怒りのせいなのか、とても冷たくて…
まるで、彼の魔法を想起させるようだった。








「…なぁ、オレとお前の関係って、何なんだろうな?」

「何って、恋人…でしょ?」

「じゃあ、ルーシィは恋人がいんのに、他の男といる方がいいのかよ?」

「ほ、他の男って…ロキよ?」





もしかしなくても、これは嫉妬なのでは?
という思いがルーシィにあらわれるものの、ロキ相手に?あのグレイが?という疑問の方が割合を占めていた。

それにだ。
つい先ほど、ロキの来た理由だって説明したし、グレイはナツなんかよりも断然聡い。

どうして納得していないのか。

ルーシィは混乱する一方だった。






「ロキだからだろーが」

「え?…あっ!?」





頭を必死にまわしていたルーシィの耳には、グレイの言葉は届かなかったが、首の後ろの開放感は感じとれた。
スルリとビキニの首の後ろの紐をグレイが取ったのだ。

二人は密着しているため、紐が前へと落ちても、ルーシィの胸が露わにはならなかった。





「ゃめ、グレイ…!」

「だから、無理だつったろ」






邪魔な紐のなくなった首筋に舌を這わせるグレイ。
そのまま、噛み付くと、ルーシィの真白の柔肌には、真紅の花が一輪。





「っぁあ!」

「どうした、ルーシィ?」





綺麗な所有印に満足しつつ、執拗に舐めるグレイ。
その度に声にもならないような吐息を出すルーシィに、思わずクツクツと笑いが止まらない。





「もしかして、感じてんのか?」

「っ、」





恥ずかしいのと同時に、怖いとも感じたルーシィ。

そんな些細な感情変化に気付いたグレイは、一段と冷たい声をルーシィの耳元で発する。





「ああ、そーいやロキと二人っきりだったもんな。アイツのこと、思い出してんのか」

「…ちが、…なん、で」





グイッとグレイの胸元を押して離れると、ルーシィは両手でグレイの頬を包み込むと、自分の目の前に持っていく。






「ど、うして…そんなコト、言う、のよぉ…」




息も絶え絶えに、言葉を紡ぐ。
瞬間、ルーシィの目からは涙が流れる。グレイは刮目し、我に返ると、気まずそうに視線を逸らす。





「……ルーシィ、オレ、!?」





そんなグレイを、ルーシィが赦すはずもなく。





「グレイ、だから…グレイだけだから…」





こうやって、キスしたくなるの…

というルーシィに、グレイは顔を真っ赤に染める。
唇にきた、やわらかな感触は、本物だったのだと。





「か、感じ、ちゃったの…だって……グレイがしたからなんだからね!?」





恥ずかしそうにボソボソ言っていたのに、何をおもったのか、最早逆ギレの勢いで言い放ったルーシィにぽかんとしたが、どこか嬉しそうにグレイはルーシィの髪を梳く。





「オレも、ルーシィだから…触りてぇし、嫉妬もする」

「グレイ…」

「悪かったな、ルーシィ。怖かったろ?」

「ううん、大丈夫。だって、グレイが好きだもの!」

「オレは好き過ぎて困ってるよ…」

「っ!」





切りそろえた髪に口づけるグレイ。
目が合うと、どちらからともなく笑い出した。






好き過ぎて勘違いして



キミしか見えない証拠だね。




End

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