第二ボタンのかわりに(1/2)





今日、大好きな先輩が卒業します。







*******




「待って、グレイく〜ん♪」

「グレイ先輩ー!!」

「逃げないでください〜」




向こうで顔面蒼白で多くの女子(女性含む)から逃げている黒髪の男──グレイ先輩。

彼女たちの目的はもちろん……



「「「第二ボタンください〜!!!」」」



あまりの勢いに、呆然と立ち尽くしているとジュビアがよってきた。



「ジュビア、あんた頬っぺた……」

「ルーシィ、これは戦争……そう、その勲章!!」



グレイ様のためなら…!!息巻くジュビアに、呆れと尊敬を抱きつつ、頬っぺたの引っかき傷に絆創膏を貼ってあげるルーシィ。




「卒業式に流血って……」

「ありがとう……あ、これ預かりものです」



ジュビアが取り出したのは、ピンクの封筒……手紙?



「ロキ…?」



差出人は、今日卒業するもう一人の先輩。
今頃、グレイ先輩なんかよりも上手に女性陣から逃げ切り、どこかで高見の見物をしているだろう。



「さっき、グレイ様によってきた娘たちをのして…丁重にお引き取りをお願いしていたときにお会いして…」

「……(のして…?)」

「それでは渡しましたので、ジュビア、第二戦に行ってきます!!」

「え、あ、うん…」



まるで、「バーゲンセールの第二陣に行ってくるね☆」みたいな爽やかな笑顔でジュビアは走っていった。











「相変わらず、逃げるのが上手なんですね」

「ええ〜、そうかなぁ?」



厭味で言ってるって、わかってるのかしら?



「で、何の用ですか?」

「……ルーシィ、機嫌悪くない?」

「そんなことないですよ?」



本当にそんなつもりは、一切ない。
言われてみれば、たしかに不機嫌かもしれない。でも、理由がサッパリわからなかった。



「無意識かぁ…」

「あ、呼び出した人が、ロキ先輩だったからかも知れませんよ?」



後ろにあった木に片手をついて、ひどく落ち込むロキ先輩



「それで、『渡し忘れてたモノ』ってなんですか?」

「まあ、『渡し忘れてたモノ』というより、『伝えきれなかったモノ』…かな?」

「…先輩?」



ロキはルーシィの片手をとると、そこに一つのボタンをのせた。



「これって…」

「僕の第二ボタン」






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