松岡凛の場合
『はい、コレ』
「ありがとうなまえ!本っ当に助かる!」
岩鳶水泳部のアンケートを受け取った友人の笑顔に、なまえも微笑み返した。
それを見た友人の笑顔が、喜びのそれから、企みのそれへ変化したのを、なまえは気付かなかった。
「じゃあ、はい、コレ」
『……何かな、この用紙は?』
「………えへ☆」
***
「何だって俺が、そんな面倒なこと…」
「まぁまぁいいじゃない、凛ちゃん!結構面白いよ?」
『ごめんね、凛……』
遥の家に呼び出された経緯を説明された凛は、釈然としない様子。
凛にもアンケートを、ということを水泳部で話したところ、
ーー渚「凛ちゃんを呼ぼう!それで、そのまま遊びに行こうよ!」
ーー怜「部活はどうするんですか」
ーー渚「じゃあ、ついでに部活にしよう!」
ーー怜「部活がついでですか!?」
ーー『今度、一人で鮫柄まで行くから、大丈夫だよ』
ーー遥・真琴「「ダメだ」」
ーー『え?』
ーー遥「オレの家でやればいい」
…という流れで今に至るのだが、このことも話した結果、ますます凛の機嫌は悪くなる一方。
「(そこはオレとなまえの二人きりでいいだろうが…)」
『(やっぱり、アンケートなんて面倒だよね…)』
凛の不機嫌の理由を勘違いしているためか、シュンと項垂れることしか出来ないなまえ。
そんな彼女を見兼ねてか、渋々ではあるもののアンケートに答えることとなった。
「(リンちゃんって、ホント、なまえちゃんに弱いよね!)」
「(黙れ渚)」
『まず最初の質問。起きて最初にすることは?』
「ランニング」
『泳ぐこと以外で、休日の過ごし方は?』
「筋トレ。気が向いたらショッピング」
『趣味はないの?』
「好きな音楽聴きながらランニング。海辺を走るの結構気持ちいいぜ」
『好みのファッションは?』
「さぁ、自分に似合ってんなら何でもいいんじゃねーの?」
『凛は恰好いいから、何でも似合っちゃうよね』
「っ!」
「さすがなまえちゃん!一点あげるね!」
『えっと…ありがとう?』
よく分からずにお礼を述べるなまえに、苦笑する真琴。
視線を再びアンケートへ戻すと、なまえはため息をついた。
『……うん、知ってる…』
「なまえ?」
もはや慣れた。悲しいかな、慣れた。
そこまでして知りたいか、我が友よ…
しかしこれも最後…と、なまえは顔を赤くすることもなく、淡々と言い放つ。
『……ずはり、下着の種類、は?』
「…それ、訊いてどうすんだよ」
「えー、凛ちゃんはどーすると思ってるのー?」
「こら渚」
「なまえちゃんにどーしてほしーのー?」
「……渚」
『ああもう、サクサク行くよ!寝るときはパジャマ派?スウェット派?』
「ラフな格好で寝る」
『次、家族構成を教えて!』
「母親と妹の江」
『好きな食べ物、苦手な食べ物は?』
「肉、キムチ。甘い物はあんまり好きじゃねぇ」
『料理はしたりするの?』
「食いたいもんがあったらする」
『好きなジャンルの音楽は?』
「洋楽」
『次の質問!得意教科と苦手な教科は?』
「特に苦手なモンはねーけど…古文とかは正直よく分かんねー。」
『それじゃあ、テストの勉強方法は?』
「授業聞いてりゃだいたい出そうなトコ分かんだろ。別に特別なことはなんもしてねーよ」
『最後の質問!ライバル・七瀬遥にこれだけは負けないというものは?』
「全部勝つ」
そう言い放つと遥を見る凛。
その視線を逸らすことなく受け止める遥。
見つめ合う…というより睨み合う二人に、なまえはクスリと笑う。
『男の子のライバル関係って、何かいいよね』
「お前、何他人事みたいに言ってんだよ」
『え?』
予想もしなかった凛の返しに、キョトリとするなまえ。
凛はニヤリと笑ったかと思うと、なまえの腰を勢いよく引き、自身の腕の中へと収めた。
『ふわっ!?』
「!凛!!」
「ハルも、なまえも…覚悟しとけよ?」
ただ驚きのあまりに固まるなまえの上で、またも睨み合いが始まるのであった……。
(僕もー!)←凛となまえの間に割り込み
(うわ、渚、テメェ…!)
(はい、なまえはこっち…その勝負には俺もいるんだけどなぁ)←なまえを自分のもとへと回収
(真琴?)
(僕だって、忘れてもらってはこまります!)
(何だ怜、いたのか)
(酷い!)
End
ーーーーーーー
これで本当にコンプリート☆
2016.4.29