竜ヶ崎怜の場合
『それでは怜くん、よろしくね!』
「はい、よろしくお願いします!」
ブンッと音がする勢いで頭を下げた怜。
もちろんなまえはクスクス笑いながらも、ペンをとった。
『まず最初の質問。起きて最初にすることは?』
「ストレッチです。これをしっかりしないとランニングにも影響がでるので」
『泳ぐこと以外で、休日の過ごし方は?』
「よく本屋に行きますね。気がついたら何時間か経っていることも多いです。」
『その気持ち分かるなぁ…背表紙を目で追ってるだけでも面白いしね』
「はい!」
『ふふ、今度一緒に行こうか』
「はい!…はい!?」
「僕も行きたーい!」
「ちょ、渚くん!」
「なら俺もついて行こうかな」
「真琴先輩!?」
「俺も行く」
「遥先輩!?」
驚く怜にお構いなしで割り込む渚。それに便乗する真琴と遥の目は、何か怖いものが見え隠れしていたが、勿論気付いているのは怜ただ一人だった。
『じゃあコウちゃんも誘って、皆で何処か行こっか!』
「……そうですね」
『?怜くん?』
少し落ち込み気味な怜を不思議に思いつつも、なまえは次の質問をした。
『好みのファッションは?』
「個性的なものに惹かれますね。そこにはキラリと光る美しさが秘められているんです。」
『レインボーとか、確かに凄かった…』
遠い目をして言うなまえに、苦笑する真琴。
水泳部で水着を買いに行ったあの日は、部員が買い物の長い女子のようだった。
視線を再びアンケートへ戻すと、なまえはため息をついた。
『……うん、知ってる…』
「なまえ?」
もはや慣れた。悲しいかな、慣れた。
そこまでして知りたいか、我が友よ…
しかしこれも最後…と、なまえは顔を赤くすることもなく、淡々と言い放つ。
『……下着の種類、は?』
「黙秘権を行使します!」
『うん、それが正しい反応だよね…次!寝るときはパジャマ派?スウェット派?』
「寝衣はパジャマと決めています。」
『私もー!よし、どんどんいくよ!部屋のインテリア、こだわりは?』
「壁に飾っている絵画ですね。流体力学をモチーフに描かれているんです。美しい…。」
『ん……次、家族構成を教えて!』
「父、母、兄がいます」
「(なまえちゃん、絵画のところスルーしたよね)」
「(誰だってスルーしたいよ。流体力学の絵って…)」
『好きな食べ物、苦手な食べ物は?』
「お寿司が好きです。日本食は味も美味しいですが何より見た目も美しい!苦手なのは体に悪そうなものです。」
『和食が綺麗なのは無形文化財の所以ってやつだね』
「体に悪そうなもの…」
『ジャンクフードとかかな』
「美味しいのにー!」
「渚くんは少々食に偏りがありませんか?」
『遥もねー』
「……なまえ」
『それで、怜くん、お昼は弁当派?購買派?』
「弁当派です。自分で作っています」
「(なまえちゃん、今度はハルちゃんをスルー!)」
「(そうだね…って、なんでさっきからコソコソ解説してるの?)」
「(飽きちゃったから☆)」
「(………)」
『好きなジャンルの漫画、映画は?』
「漫画はあまり読みませんが、映画はよく観ます。最近ではオリンピックの映像に感動しました!」
『本なら沢山読んでるよね…部屋にある水泳以外の本はどんな本?』
「ニュートン力学、ハミルトン力学、ラグランジュ力学から流体力学、機構学、量子物理学から人間工学までそろえています」
『図書館みたいなラインナップ…』
「下手したら図書館より揃ってそうだな」
『次の質問!得意教科と苦手な教科は?』
「得意な教科は数学と英語です。美術や音楽は苦手です。芸術は好きなのですが…。」
『それじゃあ、テストの勉強方法は?』
「肝心なのは日ごろの予習復習です。そしてテスト問題には必ず傾向があり、そこを確実に押さえておくのが必須です。さらに細部の範囲をしっかり固め、本番に臨めばそれ相応の結果がついてきます。」
「……だって、渚」
「うぅ、そこで僕に話振る?」
『ふふっ…視力はどのくらい?』
「そこまで悪いわけではないんですが、視界が少しでもぼやけるのが嫌なんです。クリアな世界でないと。特に美しいものを見るならなおさら!」
「ふーん、例えばなまえちゃんとか?」
「っ、渚くん!急に何を言って…!」
「そうなのか、怜」
「ちょ、遥先輩!?」
「正直に答えるんだ、怜」
「真琴先輩まで…!?」
『……あれ、何で怜くんはハルと真琴に詰め寄られてるの?』
ちゃっかりなまえの元へきた渚に聞くも、何でだろうねぇ、と笑っているだけなので、それ以上追求を諦めた。
またこのパターンですか!と叫ぶ怜をなんとか救出し、お礼を述べると、改めて四人の前に立つ。
『皆ありがとう!助かったよ!』
「礼を言われる程のことじゃない」
「ハルってば…なまえ、どういたしまして」
「なまえちゃんの力になれて良かった!」
「僕もお手伝い出来て良かったです!」
ある日の昼休み。
友人の頼みではあったけど、仲間達のことをもっと知れたことに、こっそり感謝しているなまえだった。
→オマケに他校の彼にもアンケート?
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岩鳶コンプリート☆
2016.3.5