末っ子と小倉百人一首
末っ子と小倉百人一首
※≠絵麻、高校3年夢主
『ただいむわっ!?』
リビングに響く情けないただいま。
その原因は、私の腰に抱きつき(最早タックル)をしてきたこの末っ子だ。
「なまえちゃんおそい!ずっと待ってたんだよ!?」
『そ、そっか…ごめん、弥』
いつも通りの時間に帰ってきたはずだ。
…ああでも、少し先生と大学の話とかしてたし…いやでも、そこまで時間は…と、考えるが、どうやら弥には私を待つ理由があったようだ。
「なまえちゃん!これ読んで!」
グイグイ引っ張られて連れてこられたリビングの机の上にある箱を指差し言う弥。
その箱に達筆に書かれた文字。
『…小倉百人一首』
「今度小学校の授業で、大会があるそうなんです」
おかえりなさい、と言い、説明をしてくれた絵麻ちゃん。
私が帰ってくるまで、弥と絵麻ちゃんの二人しかいなかったらしい。
「ぼく、たくさん取りたいんだ!」
『なるほど、それで練習がしたいと』
「うん!」
だから、いつもよりほんの少し遅く帰っただけで怒られたと…
その大会というのも、まさかの源平合戦。
確かに、ルールに則れば絵麻ちゃんと二人じゃ出来ないか。
意外と本格的だな…
むすめふさほせ、とか教えるべき?
悩む私を放置して、弥は絵麻ちゃんに自慢気に札の配置を教えながら準備している。
…弥よ、絵麻ちゃんも知ってると思うんだけどな…。
とりあえず、読み札をシャッフルして、向き合う弥と絵麻ちゃんの盤面を横から見つつ、一枚目をめくった。
『準備はいい?』
「いいよ!」
「はい、お願いします」
『ん、オッケー。じゃあ始めまーす!
あしびきの〜
山鳥の尾の、
しだり尾の〜
長々し夜を、独りかも寝む〜』
「はい!」
「わっ!?弥ちゃん上手!」
「えっへへ」
しっかり自分の陣地から取った弥。想像以上の素早い動きに、絵麻ちゃんも私もビックリだよ。
「ねえなまえちゃん…これってどういう意味?誰が作ったの?」
我が弟よ…まさか全部解説させる気なのか…?
そう思うとゾッとするものの、驚くほどに可愛い末っ子のお願いを断れる筈もなくて…
『まず、この歌を作ったのは柿本人麻呂という人ね。とりあえず弥には、この人はとにかく凄い人ってことだけ教えとく。んで、この歌は
山鳥の垂れ下がった長い尾っぽのように、長い夜を想い人にも逢えないで、独りさびしく寝ることだろうか
…って感じかな。おーけー?』
「なまえさん、凄いですね…」
『そんなことないよ!古典は一回ちゃんと理解しちゃえば、面白いし簡単だし…でも、この辺は趣味みたいなものかな?』
人麻呂さんは功績やら歌やら、全部引っ括めて凄い人だと思うし。
「おもいびと?」
『そうそう、大切な人を思い浮かべて、一人で寝てるんだよ』
「……とってもさみしそう」
『そうだねぇ、まあ、弥には雅兄がいるし、寂しくな「なまえちゃん!」…ん?』
「今日、一緒に寝よう!」
『…えっと』
「今日はなまえちゃんのお部屋で寝たい!……ダメ?」
『…いいよ』
あしびきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜を独りかも寝む
添い寝してもいいですか?
((私が寂しい思いをしてる…と思ったのかな?))
(なんつー約束してんだよ、弥!)
(つっくん、やめてー!)
(…椿)
(…つば兄(帰ってきて早々それか…))
End
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タイトルのセンスをください。(切実)
突発的思い付き(笑)
2015.10.6
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[ mokuji]
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