キミを守るため





『本当、亮二くんってダンス上手だよねっ!』





『え、亮二くんも変身するの?凄い、かっこいい!』





『亮二くんなら、バロンも追い抜いて、一番になれるよ!』





『亮二くんのダンスのファン、第一号が保証します!…なんて、えへへ』





いつも俺のそばに居て、応援してくれたなまえ。

俺は、あいつの笑った顔が好きだ。


…いや、なまえそのものが好きだ。


だから、俺は…






*******






 
IN.ドルーパーズ


「いらっしゃいませ」





勢い良く店にズカズカ入り、いつものシドの指定席へと向かう。けれど、そこにシドの姿は無かった。

すぐに坂東にたたみかけるように質問する。





「おい!錠前ディーラーはどうした!?いつもここに居たじゃねえか!」

「ああ…最近来ねぇな、あの人」





はあ?ふざけんな…





「あいつが居ねーと困るんだよ!俺にはロックシードが必要なんだ!」

「いや、そんな事言われても…。人間にはね、ビタミンが必要ですよ」





そこにあった果物を一粒、首に押し込んで茶化す坂東に余計イラつく。






「もういい!」

「ありがとうございましたー」





ここに居ても意味がない、と俺はさっさと店を飛び出した。





「ああ…あいつに足りないのは食物繊維の方だったな……」



もちろん、坂東の呟きは、耳には届いていない。







***







街をフラフラ歩くと、軽く肩がぶつかる。

さっきからイラついて、不機嫌な俺は、相手を軽く睨みつけようとする、が…


インベス!?




「ごめんなさい!」



ハッと我に返れば、相手は赤い上着を着た、ふつうの人間だった。


周りのあちこちにもインベスがいて、俺を威嚇しているように見えた。

思わず腰が引けてよろける。
そいつらは全部ただの通りすがりの人達だとわかっていても、恐怖心は俺を襲ってくる。


それは、往来の真ん中で頭を抱えて縮こまってしまうほどに。


インベスだけじゃない。

斬月やブラーボ…





「何で…俺が怯えなきゃならねえんだよ、あんな奴らに!クソッ…!クソッ…!」





やり場の無い感情をぶつけるみたいに、コンクリの柱を殴りつける。





「力さえあれば…!もう一度、あの力さえあれば…!」






今の俺を見れば、なまえは失望して、離れていくんじゃないか?


いや、なまえはそんなヤツじゃない。むしろ俺を気遣って『大丈夫?』と心配してくれる。

戦う力を失ってしまった俺に、
敵にビビる俺に、


なまえと一緒にいる資格はあるのか?


俺は、ずっと…なまえと一緒に……






***






気付けば、どこともわからない工場にいた。そこにいたのは、俺だけではなかった。


鎧武の紘汰、バロンの戒斗…

そして




「白いアーマードライダー…!」

「凰蓮め…使えん奴だ」





「あいつのせいで、俺は…」





そこに、インベスが落下し、果実を食べることで巨大化した。




「無駄なあがきを」




ソニックアローを引き、強烈な射撃の雨を食らわる斬月。続け様に、メロンエナジーロックシードをゲネシスドライバーから外し、ソニックアローにセット。


《ロック・オン》

「トドメだ」

《メロンエナジー》




強力な矢が放たれ、文字通り木っ端微塵。インベスが跡形もなく消し飛んだ。





「すげぇ…」





驚く紘汰に斬月の目が向けられる。





「次はお前達だ」

「戒斗!」





先ほどのインベスと斬月の戦闘で落としたロックシードを慌てて拾い、臨戦態勢に入る二人。





「望む所だ」

「変身!」 

《《ロック・オン》》

《ソイヤ!オレンジアームズ!》
《カモン!バナナアームズ!》

《花道・オンステージ!》
《ナイト・オブ・スピアー♪》





対峙する鎧武&バロンと斬月・真。

ついこの間まで、あそこに俺も…

なのに…





「力…あいつらの力が…何で俺には無いんだ…」





ふと、果実が目に入った。

あの森で取ればロックシードになり…


インベスが食えば、強くなる…



“力”。




「こいつを…!」






斬月・真の奥から叫ぶ鎧武の声は、俺には届いているようで届いていない。





「初瀬!?お前、何してんだ!?」

「もう一度、俺に力を!」





ヘルヘイムの果実を口にする。


これで、なまえとの約束を…

『亮二くんなら、バロンも追い抜いて、一番になれるよ!』



あのなまえの笑顔を見続けられる…!






「おい!吐き出せ!」





誰かがそう言った。けど、俺は果実を飲み込む。


すると、体が緑色に発光し始めた。





「何だ?」





全身が急激に植物に覆われ、その姿は、ビャッコインベスへと変化したのだ。




「初瀬…!」




工場内に、鎧武の叫び声が反響した。





キミを守るため

キミとの約束を守るため


力を欲した


(それは、自分の希望を守るためだということを)
(彼は気づかない)

End
ーーーーーーー
第十三話をいじりました☆

キミを守るといいつつ、自分が側にいたいという希望を守るため…みたいな。

インベス=人間だったなんて…
この分だと、もしかしらた裕也くんも……

っだあ!続きがとてつもなく気になる!!
早くこい、明日!!
2014.01.18

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