たとえ『かたち』が失われても






人間の欲望……

人間は、くだらないものに執着し、固執する。

オレ様が執着するなど……





*******




「ちょっと、アンクッ!」

「あぁ?」

「『あぁ?』じゃないわよっ!!」



そういうとなまえはアンクの手からオレンジ色のアイスキャンディーを、奪いとった。



「おいっ!てめぇ、何しやがるっ!!?」

「それはこっちのセリフだからっ!!」




私の目が腐ってなければ、(腐ってるなんてありえないけどっ!!)今のアンクの現状は……




「この1月の寒い日の中、薄着でアイスキャンディー食べてるってどういうことよ!?」

「そういうことだろ?それをさっさと返せ」




しれっとした顔つきで、右手を差し出すアンク。
ソファに脚を組んで座り、左肘を背もたれにかける姿は様になってる。
相変わらずのオレ様街道まっしぐらかっ!



…カッコイイけど……




「いや」

「はぁ?」




そんなアンクに、負けるわけにはいかない!

アンクは、顔をしかめながら私の右手にあるアイスと、私を交互に見た。

そっ、そんな目しないでよぉっ!!

アンクの凍ったような目に一瞬怯むも、必死にポーカーフェースを保つなまえ。




「こんなの、か、体に悪いよ?」




ピクッ、と反応したアンク。
さっきよりも不機嫌オーラが増した気がしたけど、気にせず言葉を続ける。




「映司も言ってたけど、もっとちゃんとした食事して……キャァッ!?」




気付けば、私の目の前にはアンク。
その後ろには──天井っ!?

なっ、何これ?どういう……っ!?///




「なまえ…」

「っ、ぅあい…?///」




アンクに耳元で名前を囁けられ、いっきに頬が朱く染まるなまえ。




「お前は……この体の持ち主が好きなのか?」

「えっ?」




予想もしなかった質問に、戸惑いを隠せないなまえ。
それを余所に、アンクは話し続ける。





「この体は、たしかにオレ様のものじゃない。メダルさえ集まれば、いつかはこの体は必要なくなる……」





淡々と話すアンクだが、その目はどこか陰っていて──。




「…お前は、オレ様自身を気遣かっているのか?それとも、この体の持ち主か?」

「……」

「どうなんだ?」




いつものアンクからは、想像のつかないような目で覗き込まれ、さらに朱く染まったなまえ。





「た、確かに私は『刑事さんの体』を気遣かってる」




アンクから、目を逸らさずに言った。




「でもそれは、今のアンクがいるからだよ」

「!」




アンクが一瞬大きく目を見開いた後、戸惑いの表情を浮かべたのをなまえは見逃さなかった。




「その体が、アンク自身のものじゃないのは知ってる。でも、今私の目の前にいるのは、アンク自身でしょ?私は、アンクのこと……んっ!?」




突然口のなかに広がるみかんの味。




「っ…んん」

「たしかに、今ここにいるのは『オレ様自身』だ。じゃなきゃお前に、こうして触れることはできないからな」




そういいながら、アンクは勝ち誇った表情で、放心状態のなまえの手からアイスキャンディーを奪いとると、自分の口へと運んだ。




「どうした、なまえ?顔が朱いぞ?」




気付けば、そこにいるのは、いつものアンクだった。




「……アンクの…バカァ////」




もう、あなた自身しか見られない


(「バカだと?あれだけじゃ不満か?(黒オーラ×笑顔)」)

(「ちっ、違…って、どこ触って…!!?///」)

End
ーーーーーーー
初の夢!!!
2011.1.10

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