気付けば遠いところにいた






部活は休み、宿題も特に無い…さて、何をしようかと思案しながら歩いていると、後ろから普段あまり呼ばれない名前を叫ばれた。





『あ、ケーイ!』

「…なまえ」

『今帰り…ってことは、部活は休み?タダくんは?』

「ああ。山口は日直だから置いて来た」

『あー、ドンマイ、タダくん…』





僕を蛍と呼び、山口をタダくんと呼ぶなまえは、所謂幼馴染というやつだ。


クラスが離れてからは、あまり話さなくなっていた。そういえば、クラスが離れたのは初めてかもしれない。





『部活どう?順調?』

「別に、普通だけど…」

『言うと思った』





クスクスと笑うなまえ。

クラスが離れただけで寂しいと訴えてきたくせに、結構ケロッとしてるみたいだ。まあ、社交性は一応ある方だから、上手くやれているんだろう。





『バレー部って確か、影山くんもいるよね』

「なまえ、王様のこと知ってたっけ?」

『影山くんは同じ三組で、今席が隣だから……って、王様?』





そういえば、なまえは王様と同じクラスか…

納得はしたけど、隣の席というワードに引っかかりを覚えた。

少し嬉しそうに話したなまえに、なんとなく腹が立って…





「そう、コート上の王様。自己中心的なセッター…さしずめディオニスってところかな」





ちょっとしたストレス発散。


自分で言うのもなんだが、ピッタリじゃないか?
暴君ディオニス…演劇でやるなら、間違いなく薦めてやろう。





『違うよ…影山くんはディオニスなんかじゃない…』

「何、あいつの肩持つの?」

『肩を持つって…ただ、私は影山くんは優しいって言いたくて』





は、何それ。

ただ同じクラスで、偶々隣の席になっただけなんだろ?


何か嫉妬深いミーハー女子みたいな思考だと思いつつ、首を振る。いや、僕はそういう意味で言ったんじゃないし。


ただ…なまえが僕の知らないところで、他の男を見てると思うと、僕はーーー



そこではッとする。

僕はーー何だと言うんだ。





「どーせ、ちょっと優しいところを見たってだけで、コロッと落ちたんだろ。単純なヤツ」





昔よくこうやってからかっていた。その度に『蛍のいじわるー!!』ってむくれたりして。

いつもなら、『そんなんじゃない!』って、真っ向から否定するのに…





『だったら、なに…』

「、は」

『悪かったわね、単純で』





少し赤くなった頬を膨らませて、フイとそっぽを向いたなまえ。

顔を隠したつもりだろうけど、耳が真っ赤になってて…


ああ、こいつも女の子なんだよな…ってアホみたいなことしか考えられなくなった。でも、その女の子らしい顔を向けるのは、僕じゃなくて王様になんだと思うと、胸がキリキリした。


ああ、そうか。

僕は、なまえのことがーー




気付けば遠い所にいた

いつから隣にいなかった?

End
ーーーーーーー
アンケートでHQとあったので(笑)
アニメ知識しかありませんが…初HQがありがちネタでツッキーという…
CV内山さんにキュンキュンします!←
2014.08.28

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