重なる面影






カナだったら、とびきりの笑顔で飛び付いてきそうなほどの大きな酒樽の上で、膝を抱え込むルーシィ。
船長から告げられた言葉の一つ一つが、頭の中で静かにはっきりと繰り返し反響していた。



今乗っている船は、『household』と名乗る海賊のもの。

船長さん曰く、『殺しは絶対にしない海賊』で、行く先々でみなしごを見つけては仲間…家族に引き入れる。



『世間の見えぬところで流れはじめたもの(金・銀・財宝など)』だけを標的とし、“奪った”ものは、自分達の分け前、そして、旅先の孤児院や教会、生活難な家庭に寄付してまわっているという…


──いわゆる、『義賊』だ。



あの二人も…ナツに似ている方は『ラック(luck)』、グレイに似ている方は『ブレイブ(brave)』。船長が名付けたという。


とある町の孤児院出身者だったらしく、特に声を荒げたブレイブは、『親』が『親らしくなかった』というのだ。



床に姉らと比べて、みすぼらしい姿で倒れ、名すら与えられていなかったルーシィを見て、自分の幼い頃がダブって見えたのだろうと、船長は言った。





「………」





船長の話しでわかったこと。

この船の在り方、乗組員達の家族意識。


そして、ここが『自分の知っている世界ではない』ということ。





「ここは、『マグノリアのある世界』じゃ、ない……」






マグノリア以前に、魔法すらない。






「もう、一体何が何なの…」





何故見ず知らずの家にいて、今海の上にいるのか?

何故あたしがシンデレラなんて呼ばれたのか?


偶々灰被りになってたから?


そもそも、どうしてこんなことに…


いや、それは明らかにあの依頼書が原因か。





「あたしってば、やっちゃったのかしら…」





フラッシュバックする記憶…



前に、ルーシィとグレイの魂が入れ代わった時の原因…むやみに依頼書の呪文を詠むということを、自分がしたのだ。

あの時のナツのこと、言えないじゃないか…





「と、とにかく、何か策を考えなくっちゃ!」





あの時はレビィちゃんに頼り切りだった。けれど今、ここにはあたし一人しかいない。


依頼書が光った時、あたしの周りには、チームのみんながいた。


ってことは、うまくいけば合流できるはず!




……でも、どこで?



あたしの場合、鍵がないから何もできない…



…ただでさえ、みんなの足引っ張ってて……って、ダメよっ!
あたしだって、最強チームの一員なんだからっ!

きっと、ナツが見つけてくれるはずよ…あいつは鼻が良すぎるもの!




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