旅の始まりは蒼から(1/2)





「……ぃっ……ろよ……」



…体が……揺れる…


乗り物にでも乗っているのだろうか。
体が小刻みに左右に揺れるのを感じているも、力が入らない。





「…お……のか…」





……あれ、あたし



徐々に頭が覚醒してきたルーシィ。けれど、相変わらず体を思うように動かすことができない。





「……おいっ、起きろっ!」





罵声とともに、肩に何か負荷がかかったと感じた瞬間、背中に衝撃がはしった。





「いっ!!?」





ゆっくりと瞼をひらく。
霞んだ視界が捕らえたものは…





「……とり?






……カモメッ!?」






立ち上がろうとしたルーシィだったが、やはり力が入るはずもなく……





「いったぁ!!」





見事にお尻を床に叩きつけた。





「船長、新入りの奴、目ェ覚ましましたぜぇっ!」

「船長ぉ、こいつ、無理矢理起こしたんすよぉ?」

「お、おまっ…!余計なこと言うんじゃねぇよっ!!」





背中に痛みがあるにもかかわらず、自分のまわりでもよくある、聞き覚えのあるやり取りに、ちょっとした安堵感を抱いていたルーシィ。



───ザザザッ、ザザッ



見渡す限り、碧一色の世界だった。
澄んだ空には、先程見た鳥…カモメが優雅にとびかい、アリアとも、雑音ともとれる漣の調べが流れていた。





「貴様ら、いい加減にしないかっ!」

「「はいぃっ!!」」






そうそう、いつもこうやって言い争いが終わるのよね。

……待って。何であたしは、しみじみと感傷的なの…?

……おかしい。おかしいっ!


目を擦り、3人の顔を順に見渡していった。





「グ、レイ……」





…じゃない…
でも、凄く似てる…
服着てる……←判断基準がおかしいとは、思っていない





「ナツ……」





この人も似てる…でも違う。
乗り物酔いしてない……←判断基準が(以下略





「エルザ……」





…と同じなのは、スカーレットの髪と雰囲気。
先程『船長』と呼ばれた男だ。






「あっ、あんた達、何者?ここどこよ?その前に、何、この格好?」




やっと覚醒した頭の回路をフル活用したルーシィは、改めて(というよりむしろ初めて)、自分の格好見た。



それは今朝ギルドにきた時と同じではなく、お世辞にも『綺麗』や『かわいい』とは言えぬ代物…茶系統の布でつぎはぎされたワンピースのようなものだった。
そしてなにより…





“鍵”がない。




「なんだ、いきなり…?」

「お前が無理矢理起こすから、頭打っちまったんじゃねぇのか?」

「オレのせいってかっ!?」

「ったりめーだ」

「上等だ、コノヤロウッ!」

「やるかぁっ!?」

「おまえ達っ!!!」


──ビクゥゥゥッ!!×2





やっぱり、ナツとグレイのような二人だなと再認識。





「……さて」





“船長”は、ルーシィへと向き直ると、しゃがみこむようにして視線を合わせた。





「あんなところにいたんだ。情緒不安定であっても、仕方ないだろう…」





何、こいつ。ギルドを『あんなところ』って……





「あそこは、家族ってかんじがしなかったよな〜」

「まぁ、襲撃して正解だったよな」




──『家族』『襲撃』

彼らは、何を言っている?



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