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不思議の国の妖精女王
仕事を決めようとしているルーシィを挟んで口論しているナツとグレイの仲裁をした時のことだった。
突然眩い光に包まれたのは…
***
「ザ、…きて、…よ!」
微かに響く声。
閉じた瞼を差す、光。
「…ザ…エル…て…
起きてよ!エルザ!!」
「っ!?」
「うわぁ!?」
勢い良く起き上がったせいか、少々声の主、ハッピーを驚かせてしまったらしい。
グラグラとする頭を抑えつつ、ハッピーに謝罪をせねば…
「っ、すまない、ハッピー…?」
しかし、どこを見てもハッピーの姿はない。
たしかにハッピーの声だったはずだ。
「……ハッピー?」
「オイラはここだよ!」
「ん?…んん!?」
先ほどまで影すら無かったというのに、何時の間にか目の前にハッピーはいた、のだが…
「頭だけ、だと!?」
「あれ、また中途半端になってる…」
むむむ…と眉間にシワをよせたハッピー。
すると、ジワジワと首や肩が現れはじめた。
驚き固まるエルザを他所に、そのスピードは徐々に上がって行き、足先が出終わったと同時にハッピーは「あい!」と元気よく叫んだ。
いつものハッピーだ。
「ハッピー…これは一体、どういうことなのだ?」
「オイラにもよくわからないよ…油断すると、身体が透けちゃうみたいです」
「随分と可笑しな事に巻き込まれたようだな」
「格好で言えば、エルザも結構可笑しな事に巻き込まれてるよ」
「何、私が……!?」
エルザが身に纏っていたのは、銀に輝くハートクロイツ社製の鎧と真紅のスカート…ではなく、純白のエプロンと水色のワンピース、そして本人からは見えていないが、その頭にはヘッドドレスがある。
当然《換装》したわけではない。
それ以前に、この服は持っていないものだ。
これはとても不気味なことである…
「……可愛いな」
はずなのだが。
そこは妖精女王。一般女子であれば普通はまず引くところを、早くも受け入れている。
とは言え、何も思わないわけではない。むしろ思考は回る。
「…エルザ?」
「!っコホン!…さて、私とハッピー以外には、誰もいないようだな」
「うん。ナツもグレイもルーシィも…何処にもいないんだ」
「ギルドにいたはずが、見覚えの無い道にいる…というのが現状。おそらく原因は、十中八九ルーシィが依頼書を読み上げてしまったことだろう」
「前にナツがやらかしたヤツと同じだね」
わざとらしい咳払いで誤魔化しつつ、エルザは現状の把握をはじめる。
とは言え、スタート地点としているのは、ただの道のど真ん中。
分かることなど限られていた。
「ここはマグノリアから遠いとして…フィオーレの中にいるのかどうかさえ怪しいな。適当な街にでも行くしかない、か…」
「誰かが来れば聞けるのになぁ」
「まぁ、そう簡単には」
「うぉぉぉおおお!!」
「「!?」」
エルザの言葉を切るように響く轟音。
かなり遠くからではあるものの、はっきりと聞こえてきたのは雄叫び。
何か、いや、誰かがもの凄い勢いでこちらに向かって走ってきているようだ。
目を凝らして確認したその姿は…
「ジェット!?」
ギルドの仲間だった。
「遅刻だぁぁぁあああ!!」
「待ってくれ!」
「おっと、危ないだろ!」
反射的に突っ込んでくるジェットらしき人物の前に躍り出るエルザ。
「どうしてジェットがここにいるの?」
「はぁ?」
「ジェット、今何が起きているのか把握しているのならば、話を」
「待て待て!オレはジェット?って奴じゃねぇよ!」
「何…?」
「そう言われても…オイラにはジェットにしか…」
「ジェットじゃねぇし、お前らの人違いだろ!それにジェットなんて名前、ここじゃ聞いたことねぇから、他のとこだろ」
「待て、それは一体どういう」
「オレには時間が無いんだ!じゃあな!!」
エルザを置いて颯爽と走り去る。
ーードスドスドスッ
「……待て、と言っている」
「ヒィイ!」
ことは出来なかった。
行く手を阻むように…正しくは、ジェット(仮)の目の前数センチのところに…何本もの剣が道に突き刺さったのだ。
「あい、実力行使です」
[続く]
ーーーーーーー
幕間でエルザパートでした。
2017.4.12
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[ mokuji]
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