流行は危険材料
仁王立ちする親友、いのの前に何故か正座をさせられているサクラは、少なからず危機感を持っていた。
「サクラ、女にとって何が一番重要か…わかる?」
「え、っと…」
「そう!それは、流行に乗り遅れないこと!!」
「(何も言ってないのに…)」
ぐっと寄って力説するいのにハテナマークしか頭に浮かばない。
くるくると頭を悩ませていると、ガシッと肩を掴まれる。ああ、逃げられない…とサクラは瞬時に悟る。
「……てなわけで…」
「え、何、いの…わ、待っ…
きゃぁぁぁあああ!!!!!!」
***
家のリビングの床に、サクラはスカートの裾を握り締め、震えていた。それは羞恥と、これからしなくてはならないミッションに対する恐怖だ。
ため息とともに俯いた反動で、白いフリルの付いたヘッドドレスがズレた。それを直すために卓上の鏡を覗く。そこには、まるで漫画やおとぎ話の世界にいるようなメイドさんがお目見えした。
最近、執事やメイドが流行っているという親友に着せ替え人形の如く着せられたものだ。
この格好で、ミッション…『彼氏のサスケくんをお出迎え』をしなければならないのだ。
あのクールなサスケくんのことだ。絶対に鼻で笑われるに決まってる。
いのの言う『絶対失敗しないお決まり文句』というのを言っても、絶対失敗する気しかしない。
そんな不安と戦っていると、インターホンが鳴った。お待ちかねのあの人が帰ってきたのだ。
「ただいま」
「さ、サスケくんっ…おかえり…」
「ああ、サク…ラ…」
「あの、えっと…ご、ご飯にする?お風呂にする?それとも……わ、わた…し?」
「……」
振り向き様に見たサクラに、サスケはビタっと固まる。
そんなサスケには、少し俯いているために気付かない。カミカミだが、必死で顔を赤らめながら『絶対失敗しないお決まり文句』を言うサクラ。
『私?』と言うときに顔を少し上げろといういのの指示をバッチリ守るサクラだが、もちろんサスケからどのように見えるかなんて、これっぽっちも理解はしていない。そのため、フリーズするサスケを見て、一気に血の気が引く。
絶対に呆れられちゃったんだ!
「な、な―んちゃって!冗談が過ぎたよね?怒ったよね?本当にごめ…っ」
「……」
「…え?」
今度はサスケが俯く。サクラは不安に駆られて、言葉を紡ごうとするが、それを阻止するかのようにサスケはサクラの肩を掴んだ。
「サスケくん…?」
「……に…る」
「え、何?」
親友と時と同様、サクラの頭は危険信号を出す。
けれど、身動きがとれるはずもなく……
「…サクラにする」
「!!?」
鋭い目と合った瞬間、ぐっと引き寄せられサクラはいとも簡単にサスケの胸にダイブした。サスケは桃色の髪を首筋から退かすと、そのまま吸い付いた。
「だ、ダメ!!…やぁっ…ん、ちょ、ちょっとホントに…らめぇ!」
流行は危険材料
狼さんに無理やりご奉仕させられた可愛いメイドさんは、後日親友にそう告げた。
End
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某執事漫画が実写映画化したので、メイドの格好☆
疾風の如く!の次は黒い執事ですか(笑)
2014.02.23
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[ mokuji]
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