大切な人の大切な人








往来の中、色んな人がヒソヒソと私を横目にすれ違うのも気に留めないくらい、兎に角焦っていた。





『ヤバいよね、これ!本当、もうどうしよう!!』

「ナマエちゃん、落ち着き」

『で、でもでも!金ちゃんとはぐれるなんて…』

「金ちゃんのことなら、蔵リンに任せておけば心配いらんて」

『そうかもしれないけど…もう少しだけ、近くを…』

「ナマエ…?」

『え』






テニス部の合宿で東京に来る途中、まさかというか、やはりというか…金ちゃんとはぐれてしまった。

前にもこんなことが有ったらしく、他の部員は呆れつつも何処か冷静だった…けど、私は全然冷静になれなかった。手分けして探すにも、私がこんなんで…ほっとけないという理由から小春ちゃんが付き添ってくれている。

小春ちゃんにも、ユウジくんにも…皆に迷惑かけて…私最悪だって自己嫌悪にも囚われていた。


だから、突然呼ばれて、一瞬誰に呼ばれたのかわからなかった…

…あんなにも、仲良くしていた…






「やっぱし、ナマエだびょん!」

『犬、くん…?』





久しぶりに会う彼だったのに。





「何れ、いきなりいなくなったんらよ!骸サン、スッゲー心配してたんらぞ?」

『親の転勤だって言ったのに!』






私は黒曜から大阪の四天宝寺に引っ越した。


黒曜は中々に治安が悪い方だったけど、わざわざ隣町の並盛に通う勇気はなかった。


お父さんが転勤になったって、喜びながら話してたのは、私が黒曜に通わない理由が出来たからだと思う。



でも、私は黒曜でも十分楽しかったし…特に転校してきた犬くん達とは、一緒にいて楽しかった。



一応、転校するその日に親の転勤に付き合うと言った。


タイムリミットを気にしながら過ごすのは寂しいだろうし、何処かよそよそしくされても嫌だったのが一つの理由。

六道くんなら、前々から教えていたら何らかの手段で私の転校が無くなりそうな気もしたから、敢えて当日に。






『(……楽しかったけど……お陰で、マフィアが実在するって、知っちゃったんだよね…)』

「ナマエちゃん、この人は…?」

『ああっ、ごめんね小春ちゃん!ちゃんと紹介してなくて……こちら、前いた学校のクラスメイトの城島犬くん。で、犬くん、こっちは今同じ学校で同じクラスになった…』

「金色小春いいます。小春って呼んでや!」

「っ、何なんらよお前…んなに強く手ェ握んな!」

「んもぅ、いけずぅ!でも、結構可愛いやんっ♪ロックオーンッ!」

「ロックオンって…お前、ヒットマンらったんらな!」

『犬くん、違う…』






小春ちゃんは犬くんの手を握って、ブンブン振るけど、犬くんは思い切りその手を払った。


犬くんの睨みも何のそので、ニコニコする小春ちゃん。

…ここにユウジくんがいなくてよかった…






「マフィアのとこにいるって知ったら、骸サン、無理やりナマエを取り返そうと…」

『いや本当、違…』

「さっきから骸サン、骸サン。誰やのその人?」

「骸サンは誰よりも凄い人で…誰よりもナマエを大切にしてる人だびょん!」

「そんなら、ウチの蔵リンの方が凄い人で、誰よりもナマエちゃんを大切にしとるわ!」





あれー、何コレ。

よくわからないけど、二人は何かのスイッチが入ったらしい。小春ちゃんは白石くんの、犬くんは六道くんの自慢話始めちゃった…







「「ナマエはどっちが好き?/なん?」」

『ええっと…』






いきなり、それはそれは凄い形相で振り返られたから、戸惑うしかなくって…

二人とも変態気質だと思う。

なんて本音、目の前で期待の視線を向けられると、言えなくなるわけで…






『ふ、二人とも、素敵だよねぇ…』





明後日の方を向いて、現実逃避するしかなかった。


彼女は大切な人の大切な人



二人のおかげ(?)で冷静になれた私は、さっきまでの自分を棚に上げて、道ゆく人達の視線から逃れたい衝動に駆られるのだった。


End
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以上、中の人ネタでした。

2014.02.07

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