楽園の残像(1/2)
風になれば、忘れられる
そう、思ったのに……
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「…赤丸の背中って、どんな感じなの?」
「なんだよ、イキナリ」
「なんとなくね」
たまたま赤丸に跨がるキバを見つけ声をかけた。
深い意味なんて、全くなく……本当に、なんとなく思ったことを、気がついたら聞いていた。
「そーゆーお前は、どんなだと思うんだ?」
「そうねぇ…フワフワで、サラサラしてて、ツンツンな感じ?」
「んだそりゃ?イロイロ混じってんぞ」
そんなこと言われたって……
「そーゆーイメージなんだもん」
ただ思ったままに言ったことなだけに、変なこと言ったと、今更ながら恥ずかしくなってきた。
「じゃあ──」
「えっ…きゃっ!!」
いつの間に赤丸から降りていたのか気になるところなのだが、今のサクラはそんなことを思うほどの余裕は持ち合わせていなかった。
なぜなら──
「ちょっと、キバ!!」
キバがサクラを横抱き──お姫様抱っこをしたから。
キバの腕って、こんなにしっかりしてたんだ……男の子の腕っていうより、男の人の──
「──って、一体何考えてるのよ!?」
…キバに対してなのか
…それとも
「オレがどうこう言うより、自分で確かめさせてやるよ」
ホラ、と言って赤丸の背中に
「うわぁ…」
「どうだ?」
「…頼もしい背中ってかんじ」
いつもキバのフードから顔を出していた赤丸。
背中に跨がってみて、時間の流れを強く感じた。
「よし、里中を走るか」
そう言って、キバも赤丸の背中へ。
「えっ、二人も乗ったら重いんじゃ…」
「大丈夫だろ。サクラ、すっげぇ軽いし」
女の子が喜ぶことをサラっと言うキバに、思わず赤面…
「…サクラ?」
「ほ、ホラっ!!早く行こっ///」
「おう!」「ワン!」
一匹の背の上で、二人は風になる──
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