泣いても良いよ
時が経てば、忘れてくれる
そう、思っていたかった……
*******
「…赤丸の背中って、どんな感じなの?」
「なんだよ、イキナリ」
「なんとなくね」
赤丸に跨がって散歩してたら、凛とした声がオレを呼びとめた。
本当に深い意味なんて、全くないようだ。
「そーゆーお前は、どんなだと思うんだ?」
「そうねぇ…」
口元に手をおいて百面相するサクラの顔は、正直見てて飽きない。
「…フワフワで、サラサラしてて、ツンツンな感じ?」
「んだそりゃ?イロイロ混じってんぞ」
「そーゆーイメージなんだもん」
うん。頬を膨らませて、んなこと言うのは反則だな。
今更後悔して、顔赤くして俯くのはやめろ!
「じゃあ──」
「えっ…きゃっ!!」
サクラに気付かれないように赤丸から降りて、サクラの背後へまわり──
「ちょっと、キバ!!」
サクラを横抱き──お姫様抱っこした。
「──って、一体何考えてるのよ!?」
「オレがどうこう言うより、自分で確かめさせてやるよ」
ホラ、と言って赤丸の背中に
「うわぁ…」
「どうだ?」
「…頼もしい背中ってかんじ」
はにかんだ笑顔で赤丸の背中を撫でるサクラ。
ツキンとした胸の痛みは、紛れも無く赤丸に対して。
オレって、こんなに心狭かったっけか?
「よし、里中を走るか」
モヤモヤしているのが嫌でそう言うと、赤丸の背中へ。
「えっ、二人も乗ったら重いんじゃ…」
「大丈夫だろ。サクラ、すっげぇ軽いし」
さっき担いだ(?)瞬間、そう思った。
女って、あんなに軽いのか…?
「…サクラ?」
「ほ、ホラっ!!早く行こっ///」
「おう!」「ワン!」
一匹の背の上で、二人は風になる──
──アカデミー…
下忍時代
サスケばっか追いかけるサクラ
オレはオレで、ヒナタを追っかけてるつもりだった
いつの間にか、サクラの背中を追っていた…
二人の背中が近づくことなんか、ないはずなのに──
それでも、追いかけて
──木ノ葉病院、一楽…
サクラも同じ風景の中育った
けど、今のこいつの見てる風景は、オレとは違う…
“あいつ”がいるんだ
「冷てっ!!」
突然顔に当たった雫。
一瞬、自分のモノかと思った。
「うそっ、雨?」
サクラはそういって空を見上げるも、太陽はさんさん。
…違う…
これは天からの恵みなんかじゃない
「!!!」
サクラの両肩に手をおいて、振り向かせる。
「ビックリするじゃない!!」
落ちたらどうすんのよ、と怒られたけど、今はんなことに構ってらんねぇ
「……」
ゆっくり右手を伸ばし──
「─っ……」
──サクラの頬に触れる。
「ビックリしたのはこっちだ……」
「え…」
手を目尻に持っていき、親指をそのまま下へと流す。
「…もしかして私、泣いて…」
「もしかしなくても…な」
右肩にのせた手に力が入ったのは、多分無意識じゃない。
「──今はサスケじゃなく、オレがいんだからよ…」
「えっ…」
そこに吹いた一陣の風は、赤丸が走って作り出したものではなかった。
「何、キバ?ちょっと大きい声で言って!!風で聞こえないっ!!」
「……なんも言ってねぇよ」
「うそ!絶対何か言ってたわ!!」
「……スピード」
「へ?」
「だから、スピードだよ、スピード。…とばすぜ、赤丸!!」
「ワン!!!」
「えっ、うそ、待っ…キャァァァアアア───ッ!!!!!」
忘れることなんてできない
たとえ、時が経っても──
お前は優しいから…
それだけお前は“あいつ”が好きだから…
それでも
いつか奪うと──
いつか“あいつ”の目の前で──
だから、今はまだ“あいつ”の為に泣いたってかまわない
(俺が涙を拭うから)
もう少し“今”を感じていたい、オレのワガママ──。
END
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