12/25の予定
俺のじいちゃんが死んだ。
俺のじいちゃんと言うのは、世界的にも有名なあの、サンタクロースの一人だ。
サンタクロースの一人と言うのも、サンタと言うのは各国に一人ずつくらいいて、日本を担当するのが俺のじいちゃんなのだ。
今朝、茶髪のお兄さんがやって来て、こう告げた。
「今年のサンタは君に決めた!」
呆気に取られた俺にでこぴんをかましてきて、泣きそうな程痛かった。
本来なら親父が継ぐところ、親父は既に他界しているため俺に回ってきたのだという。
茶髪のお兄さんは実はトナカイだった。
もう一人、そっくりな顔の茶髪のお兄さんも来て(双子)トナとカイと言う名前だと教えてくれた。
「あのくそじじい、センスねぇんだよ」
と言ったのは、後から現れたカイの方だった。
その後に、あの真っ赤な服とプレゼントリストと言うのを渡された。
サンタの服は素肌に着なくちゃいけないらしい(パンツも脱ぐ)。
だから寒いんじゃないかと思ったが、着てみると大分あったかくて心地良かった。
プレゼントリストは正方形の厚紙に子供(顔写真付き18才以下)の欲しい物と、いい子度合いが書かれていた。
しかし書かれていたのは一家族だけで、プレゼントを配り終えると次の家族が表示されると言う優れ物だった。
プレゼントを入れた袋だけは微妙に小さかった。
しかしこれはサンタマジックの起こす奇跡で、手を突っ込むだけで渡すべきプレゼントを手に取る事が出来るのだ。
てゆーか気付けば俺もばっちりサンタなんだなぁ。
サンタの時間は長く、北海道から全国を回って来たけれど夜明けにはまだ遠かった。
やってることが泥棒っぽくて、最初はどきどきしていたけれど、本当に誰も起きないしプレゼント渡すのが実は楽しかったりして、あっと言う間に最後の一人となった。
小県亮平(ちいさかたりょうへい)18才、プレゼントが貰えるのは、今年が最後だ。
そう言えば俺のプレゼントはどうなるんだろう、なんて思いながら窓に手をかけた。
「お邪魔し」
がたんっがつ!
「ぎゃっ」
「は? 弘忠?」
「え、先輩……ぁああ」
「あぶねぇだろ馬鹿!」
「おおぅ……」
説明すると、窓を開けようとしたら思いっきり窓が押し開かれ、顔面強打した俺は屋根から落ちそうになったのを必死に窓枠を掴んでこらえる。
しかしそこにいたのは、俺の憧れの先輩、亮平先輩だったのだ。
驚きに掴んでいた手を放してしまい、落ちそうになったところを亮平先輩がなんとか掴み上げて部屋に引きずりこまれたのだった。
「そっか……亮平先輩が最後の一人だったのか」
「つか、お前その格好……サンタのじいさんは?」
「あれ、俺のじいちゃんで先日亡くなりました」
「そっか、ご愁傷様……」
正座してなんだか暗い雰囲気の俺と先輩。
「って、え!? 先輩なんで起きてるんですか?
眠気コロン……」
「ああ、あれな。俺には効かないらしくて、だから毎年じいさんが最後に俺のところに来てだべってたんだ」
「そうだったんですか」
だからリストの最後が先輩なのか。なんだか切ないなぁ。
「あ、じゃあえっとプレゼントです」
「はは、なんか弘忠からプレゼントもらってるみたい。なんか変」
でもありがとう、と先輩が受け取ったプレゼントは、うすっぺらな赤い包みで、恐らく手紙かなんかだろう。
「じゃあ俺……」
「いいじゃん、少し話していけよ」
「じゃあはい」
びりびりと包みを破くと、やっぱり中から出てきたのは手紙だった。
「えーと、
『亮平、毎年楽しかったよ。本当にありがとう。今年で最後だと言うのに行ってやれないのが申し訳ない。そこでとっておきのプレゼントだ。そこに私の孫の弘忠がいるだろう?お前に弘忠をあげよう。大事にしてやってくれ。』」
「……え、俺!? じいちゃん何考えてんだろ、俺なんかもらったって先輩嬉しくなんか……」
ぎゅっ。
え、いやぎゅって、あの。
「先輩?」
「何?」
「いや俺が聞きたいですよ」
なんで先輩、俺を抱きしめちゃってるんですかー!?
「だって弘忠もらえたんだろ? 俺、欲しかったよ弘忠」
顔見えないけど耳元でぼそぼそ言われるとこしょばいよ。
「……ホモ?」
「馬鹿お前の方がホモ臭いんだよ! 憧れだー、とか言っていつも俺にひっつきやがって。今年で卒業なんだなってこないだ話したら泣きそうな顔してさぁ!」
「え、そんなでした?」
「そんなでした!」
ぎゅー、っとさらに強く抱きしめられる。
確かに俺、先輩ともう少しでお別れだと思うと少し悲しくなったけど。
「なぁ、キスしたことあるか?」
「は? ありますけど」
「じゃあいいよな」
ちゅっ。
「……うわ」
「うわってなんだうわって。」
ちゅーされちゃったよ。
うわ、って思うだろ誰だって。
だって先輩とキスとか、想像もしないし。
「とにかくお前今日から俺のだからな。じいさんの形見だ、大事にしてやるよ」
「……セックスはなしですよ」
「えー。じゃあキスはありなんだな?」
「い、うっ……」
MerryX'mas!
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