2018/04/29(日)

 ザザーー。
 波の音とさわやかな風がカーテンをなびかせ吹き抜ける。柔らかいベッドの上で、窓の外に見える海を呆然と見つめた。
 綺麗だーー。
 まるで非現実的な目覚めに、ぴくりとも動かない身体も相まって、天国にでもいる気分だった。
 ああ、そうだ、これはきっと夢なんだ。すごく心地が良くて、もっと、ずっとこの世界にいたいーー。

 チーン、どこかでトースターがパンを焼き上げたような音がした。誰かいるらしい。
 誰かって?
「あ……夢じゃない」
 この素晴らしい世界は夢でも天国でもなく、一昨日飛行機で来たばかりの沖縄だった。
 僕は立ち上がり、カーテンを腕に絡めながらバルコニーに立った。
 海に面したこの家は、晴人の別荘だと言う。普段、シーズン中は貸別荘として貸し出しているらしい。
 一体何者なのか、よくわからないけれど悪い奴ではなさそうだ。
「いや、やばい性癖は持ってるみたいだけど……」
「おはよう佑都。佑都の性癖がやばいって?」
「いや、僕じゃなくて……ん、んっ、だから、晴人」
 いつのまにか背後に立っていた晴人が、さも当然のように僕のパンツを脱がし、性器に触れた。
 晴人の指が先端を撫でて、敏感なところを弄られる強い刺激に震える。
「ほら、気持ち良いこと、しようよ」
「あ……あ……だめ」
 僕は口ではそう言うけど、堪える気もなかった。
 恥ずかしい、でも、どうしようもなくーー。
「あっ……」
 しゃーー。バルコニーの下に広がる木々に僕は放尿した。
「もう……」
 どうすんだよ、癖になったら。もう、殆ど引き返そうにもないけれど。

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