不二君の影響ではない。
……と主張してみるが、やはり不二君の影響が一番強いのではないかと思う。

あの日以来、私はモーニングコーヒーならぬモーニングカフェラッテを飲むようになった。



モーニングカフェラッテ




今日も私は、エスプレッソに牛乳とお砂糖をたっぷり入れて美味しいカフェラッテを堪能している。

今朝はご飯と味噌汁なのに、とお姉ちゃんが怪訝な顔をしていたが、構いやしない。
私としては、不二君と同じ(ような)朝を迎えているというところに、意義があるのだ。


「あー、カフェラッテって美味しいねえ」


しみじみした風に言うと、お姉ちゃんに「アンタこないだまで紅茶派だったクセに」と突っ込まれた。
唐突に変わる生き物なんだよ、人間ってのはさ……。



………………



ところで、カフェラッテを飲むようになってから、私に変化が現れたということを言っておかねばなるまい。

何かと言えば、ベタだが眠くなくなったことだ。

今までカフェインの効能をあまり信用していなかった私だが、それが凄いのなんの!
苦手な授業を受けている時は基本的にウトウトしているのに、モーニングカフェラッテ効果でずっとパッチリなのである。
お陰で、以前よりは授業内容が頭に入ってくる……気がする。気がするだけかもしれない。

とにかく、睡魔?何ソレ水泳選手のこと?と言わんばかりに目が冴えまくるから、自分自身びっくりだ。
ついでに頭も冴えてくれたらいいのにと思うが、そこはまあカフェラッテではどうにもならない。

それはさておいて……私、今ならカフェで働けるかもしれない。

そんな感じで、カフェラッテすげえ、流石不二君、と(不二君特に何もしていないのに)心の中で崇拝していると。


「佐藤さん」


「はいっ、すみません!」


「え?」


その不二君が、ポンと私の肩を叩いた。

放課後の靴箱にて。今まさに考えていた人物から声をかけられるなんて、全く予想していなかったものだから、つい訳の分からん切り返し方をしてしまった。
今の私は、さぞ物真似歌合戦でご本人に登場された人並に驚いた顔をしていることだろう。


「あ、いや、ゴメ……なんでもないの、アハハ……」


とりあえず笑顔で誤魔化してみるが、不二君みたいなナチュラルスマイルは出来ないし、果たして誤魔化せているかどうか。

クス、と笑って彼が口にしたのは、この話だった。


「佐藤さん、最近カフェラッテ飲んでるでしょ」


「え?」


「授業中眠ってないし、それに毎朝コーヒーの香りがする」


「………………」


なんと、気づかれていたらしい。
普段は眠っているということを何故知っているのかという疑問は置いといて、自分では気づかなかったがカフェラッテの匂いが私の周囲に漂っていたようだ。

なんとなく、先日不二君にカフェラッテとモーニングコーヒーの話を聞かされたこともあるし、不二君の影響みたいに思われそうで怖い。
というか、高確率でそう思われている感じがする。確証はないが。


「カフェラッテはどう?美味しい?」


私が妙な不安感に駆られているのに気づいているのかどうかは謎だが、いつもと変わらない微笑みでそう言う彼。
とりあえず、肯定。


「コーヒーっていいよね。飲むと頭がスッキリするし。なんとなく、授業内容がスッと頭に入ってくる気がしない?」


なんと、まあ……彼も私と同じことを思っていたのか。
いや、彼の場合、気がするだけでなくて本当に頭に入っていそうだが……。


「うん、する」


「でしょ。凄いよね」


頷くと不二君は、俺の父ちゃんパイロットなんだぜ!と誇らしげに語る少年のような笑みをうっすら浮かべた。
コーヒー関連知識が豊富だったのは、モーニングコーヒーを飲んでいるからという理由だけではなさそうだ。


その後、二、三言言葉を交わしてから、「部活があるから」と、不二君は去っていった。


「甘いのが好きなら、キャラメルマキアートを試すといいよ」


そう言い残して。




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