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運命的な出会い?





「ぐおー」

「……」

「がー」



いつものベッドで大の字になって寝てるのは起きていれば反抗的な女。寝てれば大人しいかと思えばそんなことないようだ。




「ぶふー」

「…うるせェいびきだな」

「んがー」



色気のないいびきをBGMに出会った日のことを思い出す。今と全く変わらねェあの時を。
















それはまだ、おれがアラバスタに来る前の話だ。たまたま寄った小さな街でおれはコイツに出会った。そこは海賊がよく来る街のようで、どうやら街の人間もおれを知っているようだった。おれが道を通るたびにあちこちからヒソヒソと話しているのが聞こえる。まったくうぜェ話だ。




「あーおなかすいたー!死ぬー!」



「……」




なんだあれは。道のど真ん中で大の字になって寝ている女がいる。とても信じられねェ光景だ。背中に土がつくだろうどう考えても。





「だれかー!メーシー!」



「……!」


かかわり合いにならないようにと、むしろ興味がないからと足早に女の横を通り過ぎようとした時、目があった気がした。おそらく気のせいじゃねェと思うが。

目を逸らしているうちに、気がつけば土つき女がおれの足元にいた。何だコイツは。音もなく近づきやがって…!忍者か。



「あの…」

「……」

「すいませーん」

「……」




この女、どんな神経してやがるんだ。おれを七武海と知らねェのか?こんなやつとことん無視だ。





「ちょっと、聞いてますか?」

「……」

「シカトか」

「……てめェ」

「あ、反応した」



先ほどよりも周りの反応が大きくなった気がする。いや、恐らく気のせいじゃねェハズだ。つーかコイツなんなんだ。




「…なんだてめェ。干からびたいか」

「いやァ、もうすでに干からびてるんですよ。お腹と喉が」

「…だからなんだ」




こんな女といつまでも話している気はねェ。面倒になって通り過ぎようとすればコートの裾を引っ張られた。……この女本気で死にたいのか。




「放せ」

「いやですね」

「あァ?」

「アナタ、はたして私を見捨てて通り過ぎることが出来ますかね」

「なにいってやがる…、」




珍しく困惑していた。おれが誰か知らないにしろ、かなり威嚇しているというのにまったく怯む気配がない。それが困惑の原因だろう。なにか技でも持ってんのか?





「……何するつもりだ?」

「にやり」

「なんの効果音だそれは。いい加減放せさもないと…」




「キャアァァァッ!」

「は…!?」

「た、助けてください!この人が私に…っ、私に…!」

「てめェ何言ってんだ!」





いきなり叫びだしたと思ったら、おれが…何したって?
ふざけんな、今までで一番注目を浴びてるじゃねェか!


周りを見回せばヒソヒソどころか普通に「あのクロコダイルが…!」とか「あんな女の子にいけないことを…!」などとほざいていやがる。




「助けてくださーい!」

「てめェ…!やめねェか!」

「やめなーい。おなかすいたし」
「十分元気じゃねェか!」

「そこのお兄さん!私をこのワニっぽい人から救ってください!」

「やめろって言ってんだろ!……、仕方ねェ。食わせてやるからついて来い」

「なに?私を食いたいって?1000万年早いわ」

「一言も言ってねェ。腕のいい耳鼻科紹介するか?」

「さ、ご飯ご飯!」

「てめェ…!」





この女どこまでおれをからかう気だ?それ以前にこんなやつ初めてだ。誰と知らなくともここまでおれになめきった態度をとるとはな。

メシを食べに行くということにとりあえず落ち着いたから、女をまえにして道を歩くと、まだコソコソと声が聞こえる。不愉快で仕方ねェから。感情のままにサーブルスしといた。





「なに?今とんでもない音が聞こえた…、ってなんだこれ!めっちゃ砂っぽい!」

「てめェ…本気でおれを知らねェのか」

「なに、有名人だった?」

「……本気か」




久々に頭を抱えたくなった。本気でこのおれを知らねェとはな。仕方なく「クロコダイルだ」と名乗ると、ハタとした顔で固まった。そう思ったら「あー!」とデカい声を出しやがった。本当にうるせェ女だな。



「どうりで偉そうだと思った!」

「……」

「おまけに名前の通りワニっぽい!」

「……お前、」

「んー?」

「名前はなんだ」

「名前?あー、私はaaa!」

「……あんまり似合ってねェな」

「普通そこは似合ってるって言うんじゃないの?それじゃモテないよワニ男さん」

「うるせェな。おれは嘘がつけねぇんだ」



絶対うそ!顔に書いてあるもん!ついでに顔色も悪い!、なんて余計なお世話な野郎だ。そうしてようやくメシ屋に辿り着いた。
















「うーん…ぐわー」

「……」

「ぐーん…すーん」

「…おい、いい加減起きやがれ」

「すかー」

「……」




ぼかん





「ぶふっ!?」

「起きたか」

「い、痛い…!え、なんだい?」

「もう昼だ」

「あっそ。私は寝る」

「そうか、寝たければ寝ろ。寝ている間に干からびたくなければな」

「よし、メシだ!」





単純な女だと思いつつも出会った頃と変わらない反応に、知らぬ間に口の端が上がる。






「何やってんのワニ男ー!ご飯ご飯ー!」

「本当にてめェは色気より食い気だな」

「うるさいよ。それが私さっ!」




出会った状況最悪、相手の印象最悪。だが、出会った頃と比べて変わらぬことも、変わったこともたくさんある。これからもそれが見られればいい。






これって運命的な出会いって言えますか?


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