マルコ×かまってちゃん

泣く子も爆睡する真夜中にドンドンと周りも顧みずノックする馬鹿を一人知っている。そしてその馬鹿は薄い板一枚を隔てて向こう側にいるのだが、さて招き入れていいもんかね。きっと開口一番にこう言うんだろう。


「眠れないんだけど」
「眠れないんだけど!」


若干声の大きさは違えど予想通り。ドアを開けた瞬間般若の形相で仁王立ちする馬鹿、もとい恋人のあゆむ。おれが言うのもなんだがこいつは少しばかり変わっている。簡単に言えば素直じゃないのだが、しかしそのひねくれ方がどうにも頓珍漢なのだ。


「お前は週一で眠れなくなるのかい」
「そうだよ!世の中にはいっぱいいるんだよ!」
「そんな無駄にバカでかい声出してるから眠れないんだよい」
「そういうわりには部屋に入れてくれるくせに」
「さて、そろそろ寝巻に着替えるとするか」


もう暑くなってきたし薄いズボンにでもしようか。そうだ次の島に着いたら新しい服を買うのもいいかもしれない。でも今はとにかく眠いから早く寝るとしよう。


「…準備万端か」
「早くおいでよ!眠いんだってば」
「さっき眠れないって言ってただろい」
「いいから早く!カモン!」
「カモンと言われてもな…。お前寝相悪いし」


どうしよう。今日は安全安心を重視してソファで眠ろうか。ぐっすり眠ってるところにあゆむお得意の蹴りが飛んできて目が覚めるのは勘弁願いたい。よし、今日のおれのベッドはソファだ。


「ちょっとどこで眠る気?」
「どこって見たらわかるだろい。ソファだよ、ソファ」
「ゆ、許さん!」
「許さんって…」
「私が泣いても構わないのか!?」


まあ、な。そんなふうに言われては本物のベッドで寝るしかないだろう。こんな時間に泣かれて睡眠時間が減るのもいやだしな。相変わらずひどい甘えん坊だな。ああ、かまってちゃんって言うんだっけ?


「絶対に蹴るなよ?いいな?」
「オーケー」


その夜。全然OKじゃなかったわけだがなにか?





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