妻に出て行かれたマルコ
しばらく前に妻が出て行った。原因はおれにあるのは百も承知だがいまだに謝ることができずにいる。出ていく直前につぶやかれた言葉がどうにも胸に刺さったまま抜けないでいるのだ。
「もうあなたについていけません」
シンプルな言葉であったが案外そういったほうが心に刺さるものだ。
ああ、まあたしかにもし自分が女であるなら自分のような男は願い下げだが、こちらの言い分としてはそれについては結婚する前から分かっていたことじゃないかと思うわけで。
別居の原因。夫の仕事の忙しさ。
それだけならあゆむも堪えていただろうが、仕事にかまけて妻が楽しみにしていたお出かけを続けて4回ほどキャンセルしてしまったのだ。しかもドタキャン。2回目まではまだ笑ってくれていたような気がするが、3回目では寂しそうな顔を、4回目では冷静な怒りへと変貌を遂げてしまった。あゆむだって菩薩ではなかった。元来気の優しい女ではあったがそりゃあ怒りもするか。
それにドタキャン自体は今回が初めてなわけではない。
夫婦生活およそ10年目。こうして妻は出て行った。