「ご、ごめんね」


お風呂場から帰ってきた彼は先ほどと同じくどっかりとソファに腰を下ろしたが、私のほうを見ることもなければ呼びかけても返事だってくれない。これはずいぶんと怒らせてしまったようだ。もう何度も謝っているがむっすりとしたまま無視を貫いている。


「ほ、本当にごめんね…!あの時は急だったし私も慌てて」


手を合わせて拝むように謝って早数十分経過。どうしよう、これはもう顔面を地面に擦り付けるくらいの土下座をしなければ許してもらえないだろうか。人としての尊厳を捨てようかどうか迷っていると、散々背を向けていた彼がようやく振り返った。それに安心していると。


「へぶっ!」


殴られました。叩かれました。わりかし強い力でほっぺたを一撃。す、すごいな。ほっぺた抉れたかと思った。この頃からすでに不死鳥マルコの片鱗が窺えるんですがそれは。


「まったく…子ども扱いするなよい」
「す、すびばせん…」


振り返ったマルコくんは怒っているのか困っているのか複雑な顔をしていた。ああ、もしかしたらこの時期は難しい時期なのかもしれない。そうだとしたら本当に悪いことをしてしまった。まあもっとも、子ども扱いするなと言ってる時点で子どもであるのだが、それを言ったら今度こそ激怒するだろう。それにそんな子どもらしい部分も可愛らしいので私としては全く問題ない。


「いいか、そのうちおれのほうが背だって大きくなるし力だって強くなるんだ。その時は今みたいな子ども扱いなんてできねェからな」


ついには立ち上がって力説する彼だが、その姿があまりにも可愛らしくてどうしたらいいんだ。もういっそ抱きしめてしまいたいよ。あのマルコさんにもこんな可愛い時期があったのね…。


「そうだね、そのうちマルコくんのこと見上げるようになっちゃうかもね」
「かもじゃなくてそうなるんだよい」
「でも力はもうマルコくんのほうが強いと思うけど」


彼がちょくちょくくれるパンチは想像を絶するほどの力だからね。実際に体験した私が言うんだから間違いない。そう思うと大人になったマルコさんはこの子以上に強いのか。あの時代ではこんなふうに叩かれることなんてないから知らなかったけど。そっか、ここからもっと成長していくんだね。
一方、すでに私よりも力が強いと言われたマルコくんは嬉しそうに、得意気になって腕を組みながら満足そうな笑みを浮かべている。可愛いなぁ。


「大きくなってみさきを見下ろしてやる」
「…主従関係的にはもう今現在見下ろされてるけどね」




Title:Rachelさま





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