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「くっそー…」


夕食も食べ終わったので後片付けにテーブルを拭いてる最中なのだが、とある男の顔が頭に浮かんで若干憂鬱になった。その男とは世界最強の剣豪、鷹の目のミホーク、その人である。

ミホークとは恋人ではあるが、数ヶ月会えないとかザラにあるため恋人としては微妙な立場にいるんじゃないかと最近思い始めた。ギリギリでキスまではしたがそれ以上のことは何もないし彼もそんなに望んでいるようには見えない。アンタの女じゃないのか私は!と憤っても虚しくなるだけだし正直さびしくてしかたない。
前にミホークの住処で帰りを待っていたこともあったが、あそこはいろいろと危険すぎた。あの場所で生き残るのは私にはちょっと難しい…。
だからこうして自宅で帰りを待つことに決めた。完全に向こうの都合に左右されてしまうのが悔しいけど、私は待つ身なのだし諦めるしかないのか。


「もう何ヶ月なの…」


カレンダーを見て余計に寂しくなった。会えた日は赤いペンで丸をつけていたのだがその月のカレンダーはとっくに剥がされていつ会えたのかもう詳しく覚えていない。
下世話な話ではあるが、友人たちの惚気話を聞くたびに羨ましくなってしまう。私はそういった経験はないけど、初めてはあの人と決めている。なのにあいつは帰ってきてもただご飯を食べて新聞読んでお風呂入って寝て終わり、次の日には何も言わず帰っちゃうしなんなの…!私だって好きな人と触れ合いたいんだよ…!


ゴシゴシと机が削れるんじゃないかと思うくらい布巾で拭いていると、玄関でドアの開く音がした。


「ま、まさか不審者!?」


こうみえても腕っぷしはそんなに強くない。ものすごく怖いので近くにあったデッキブラシを掴んで玄関近くまで行く。身を潜めて不審者が来るのを待つがやっぱり怖い。ギシギシと足音が聞こえるたびに心臓が止まりそうになる。


「く、くらえー!」


思いっきりデッキブラシを不審者の脳天に落としてやった。のだが、ブラシが届く前にパシッと捕まれてしまった。


「フン…。その程度でおれをやれると思ったか」
「うわっ…!なんでこのタイミングで帰ってくるかな」


何ヶ月ぶりにこの顔をみただろう。嬉しいはずなのに登場のインパクトといきなりの再会で素直に喜べない。


「息災か?」
「見てのとおり」


たった一言、ぶっきらぼうに聞いてくるのがミホークらしい。さっきのデッキブラシで私が元気にやってることくらいすぐにわかっただろうに。それにしても…。この長身の男がこんなふつうの家にいるとすごく浮いて見える。オーラというか威圧感があるから違和感が生まれるのかも。


「ご飯食べる?あ、もう食べてきた?」
「…いや」


時計をみれば短針は9を指していた。


「お風呂沸いてるけど…」
「お前は入ったのか」
「うん」
「なら待っていろ」


ご飯はいらないのだろうか。本人はといえば自慢の愛刀をソファに置いて慣れたようにシャワールームへ消えてしまった。
世界最強の大剣豪。彼を目指して海へ出た人間は山ほどいるだろう。その男がこうしてわざわざ訪ねてくると思うと誇らしいというか優越感を覚える。まして一瞬だろうとあの黒刀を手放すのだ。そんな部分を見られるのだから少しくらい自惚れさせてほしい。


「とりあえずおにぎりでも作っとくか…」


おなかがすいてるかはわからないけど、とりあえず作っておく。中に入れる具なにがあったかな…。冷蔵庫をのぞいてみるが梅干ししかなかった。


「ミホークって梅干し大丈夫だったっけ」


基本的には好き嫌いはなかったと思うけど…でも梅干し食べてすっぱそうな顔をするミホークも見てみたい気がする。


「そういえば着替え用意しなくっちゃ」


思い出して慌てて着替えを取りに行く。こういう時のために何着かおいてあるのだけど、ずいぶん長いこと箪笥にしまってあったので匂いが気になるが、あれもこれも連絡の一つも寄越さず急襲したあいつが全部悪い。



「入るよー…は?」


一応声はかけたがどうせまだ入ってるだろうと思っておもむろにドアを開けた自分をぶん殴りたい。ドアを開ける動作のまま固まる私と、その視線の先にいるタオル一枚腰に巻いただけの剣豪…。


「ご、ごめん!き、着替えを持ってきたからこれを…」
「いらん」
「はァ?ちょっといつから裸族になったわけ?」
「どうせすぐに脱ぐことになる」
「すぐにって…」
「お前もだ」


まだ髪も濡れているというのにミホークは強く私の腕をつかんでタオル一枚のまま寝室へ直行した。ちょっと待ってどういうことなの…!


「ま、待ってよ…!」
「待たん」


ふかふかなベッドの上に力任せに引っ張られて私の体は容易く沈んだ。なんとなく状況はわかるけど展開が急すぎて制止の声を上げざるを得ない。なのにミホークはそれをバッサリ切り捨てると馬乗りになって見下ろしてきた。その眼光は名に恥じぬ、鷹のように獲物を狙う目をしていた。


「だ、だって急すぎる…!」
「恋人同士だ。問題あるまい」
「問題はそこじゃないっ…あ!」


私は初めてだし上にのしかかる男はいつもと様子が違うしでとりあえず理由を聞こうと思ったのに服の裾から入ってきた大きな手のせいでそれはかなわない。


「待ってよ…!」
「待たんと言ったはずだ」
「やっ、やだ…!」


だめだ。どこでスイッチが入ったのかはわからないけど本人はその気らしい。そんな私も耳元に感じる彼のかすかに熱い息遣いだったり手の動きだったりに翻弄されてすっかりその気になってしまった。
まだ疑問や少しの恐怖はあるけど、ミホークが私にひどいことするはずがないと信じているから、だったらもう身も心も任せてしまおうか。


「お願い…痛いことだけはしないで…」
「…善処しよう」


この言葉が合図となったようで、先ほどに比べて彼の手が忙しなく動いている。直前にお風呂に入ったためかその手は温かく、少し冷えた私にはちょうどいい。とても安心する。


「んっ…!」


やわらかさを確かめるように触っていた指先が胸の先に触れると我慢できず声が漏れてしまう。何もかもに慣れなくて恥ずかしくてミホークの顔を盗み見すればいつも以上に真剣な顔をしていて額にはわずかに汗が光っている。ハッキリ出さないだけで必死なのが私だけじゃないのがわかって嬉しい。お互いがお互いのことにこんなに一生懸命になっている。


「…はっ、んん」
「みさき、声を抑えるな」
「そ、そんなこと言ったって恥ずかしいんだよ」


なにを恥ずかしがることがある、とわからなそうにする男。ど、どうしてわからないの…!男の人は恥ずかしくないの?あ、そういえば。


「ね、ミホークも声出してみてよ」
「なに…?」
「だって私だけじゃ恥ずかしいし、私も聞いてみたい」
「…無茶を」


無茶なの?気持ちよかったら勝手に出るものだと思ってたのに。もしかしてミホークは違うのだろうか。


「お願いってば」
「…随分と、余裕だな」
「んあっ」


今までとは違う、痺れるような刺激にビクッと体が強張った。突然強くなった快感に戸惑いを隠せないのに、ミホークが先を甘噛みしたり舐めたりすると結局甘い声を漏らすしかできなくなる。意味のない言葉だけが口から出て呼吸もままならないのに深く唇を奪われて涙がこぼれた。


「はあっ…あっ、ミホーク…くすぐったい」


胸から手が離れ緩やかにくびれをなぞって降りていく手つきにぞくっとした。くすぐったいのだけどそれだけじゃなくて、体の芯から疼くような熱さ。さっきまで冷えていた私の体はすっかり熱を帯びていて彼の手にも負けないくらい火照っている。あつい。


「んっ…!そこはいや…!」


ミホークの手が中心に優しく触れて慌てて羞恥心が戻ってくる。いやだと腕をつかんでみても鍛え抜かれたたくましい腕はびくともしない。拒否の言葉も気にせず下着の上からクルクルと撫でられればかすかに水音が聞こえて死にたくなるくらい恥ずかしい。思わず手で顔を隠すが、それに気づいたミホークに退かされた挙句片手で拘束されてしまった。


「なぜ隠す」
「あ、ん…恥ずかしい…」
「そこがいい」


この変態!と罵ろうと思ったのに不意に一番敏感な部分をつままれて体を跳ねさせるだけになってしまった。


「あっあっ」


ひっきりなしに漏れる淫らな声。ビクビクと勝手に痙攣する腰。響く水音。そのすべてが私を変えていく。ふだんの慎ましい女の皮を一枚一枚剥ぐように男に酔っていく。だけどそれもこの男であればこそのもの。彼もそうであってほしい。


「ひあっ」
「痛いか」


痛いか痛くないかで言えば少し痛い。ちょっとだけ怖くて目線だけでそれを訴えれば中に入っている物が指であることを知る。ゆ、指でこんなに痛いの!?それじゃあその時になったらいったいどうなってしまうの…。世の中の女性がこんなことしてるなんて信じられないんだけど…。

痛みのせいで少し冷静になった頭が余計なことを考えはじめる。ミホークのことは信じてるけど、こっちは未知の世界なんだしふつうに怖くなってきた。


「やぁっ、ああっ」


ちょっとのんきに考えていたらあのビリビリとした感覚が駆け巡った。急に敏感なところばかりせめられて頭が真っ白になる。乳首を舐められ敏感な芽をこすられ、中は指が抜き差しされる。グチグチと響き渡る卑猥な水音にさえ意識がいかなくなったころ、全身に力が入って急に抜けていった。

はぁ、はぁと荒い息遣いが部屋にこだまする。痙攣する体もそのままにぼぅっと天井を見上げていればミホークが視界に映った。


「無理をさせたか」
「…まだ、大丈夫…っ」
「なかなか派手に達したな」
「言うなばか…」


まだ呼吸も整わないうちに再び濡れたそこを触られてあの熱が戻ってくる。見た目にはそぐわず器用に下着を脱がせると足を大きく開かれた。


「だ、だめ…!」
「いまさら恥ずかしがってどうする」


今さらも何も初心者なんですけど…。
恥ずかしいのに割り開かれた足の間に入り込まれて完全に閉じることができなくなってしまった。顔の横に両手をついてのぞき込む彼の顔は本当に凛々しい。ドクドクと急速に鼓動が速くなっていく。ああ、いよいよなのか。


「なるべく痛みがないよう配慮はするつもりだが」
「うん…平気。痛かったらかみついてやるから」


冗談を言って笑えば彼もほんの少しだけ笑ってくれた気がする。
そして今まで感じたことのないほどの熱をそこに感じて息をのんだ。ぐぐっと腰を押し進められて先端が中へ入ってくるが、やはり痛くて涙が出てしまった。まるでギチギチと音が聞こえてきそうなほどの圧迫感に苦しくなる。するとそれに気づいたのかミホークは優しいキスをくれた。無口だし不器用だけどこの人のくちづけはひどく安心する。
自分でもわかるくらい体中から力が抜けた。絡みあう舌に夢中になっていると強烈な痛みが襲って一瞬呼吸が止まる。


「いった…!」
「長引かないほうがいいだろう」
「…もう痛くない?」


そっか。ものすごく痛かったけど、やっと恋人としてひとつになれたんだ。そう思ったら今まで彼を待ち続けた時間とか一緒に過ごした日々とかが急に頭の中を巡って痛みではない涙がこぼれた。ああ、好きな人とつながれることがこんなに幸せでこんなに泣けるなんて。


「泣くな」
「幸せだからいいじゃない…」
「…そうか」


こんなときでさえ相変わらずぶっきらぼうだけど、いつもより嬉しそうだから大目に見てあげる。これが終わって朝になってしまえばきっと彼はもういないんだろうけど、こんなにも幸せな気持ちをくれたから、しかたない。また数ヶ月会えなくても待っててやろうかな。





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