「ただいまー…、どちらさんで?」
家にかえったら見たことのない少年が不機嫌丸出しの顔でソファに座っていた。
「……」
「お〜いボクぅ?なんでここにいるの?」
「……」
「はやく帰らないと恐〜いおじさんが帰ってきちゃうぞ〜?」
あら?この子本当に不機嫌なんだね。私の言ってることガン無視だよ!でもクールなとこがなかなか…。この不機嫌ボーイは絶対いい男になる!
「ねぇ君どこの子?」
「……」
「そんなにツンケンされたらお姉さん、こうふ…テンション上がって襲っちゃオボフッ!」
ついテンションにまかせて襲っちゃうなんて言いそうになってしまったよ。だがしかし、それまで黙りこくりシカトし続けていた不機嫌ボーイにブン殴られた。 エェーッ!?
「テメーおれがわからねぇか」
「え?」
あれ、なんだろうこの馴染みのある感覚。…ちょっと待って。よくよく考えればクロコダイルの住みかにこんな少年が一人で入り込むなんてムリだよね?
ゴ、ゴクリ…。
「君…まさか、クロコダイル?」
「他だれがいるんだボンクラ女が」
ぎゃああっやっぱり本人だった!じっくり見るとたしかに面影があるかも…。艶やかな黒い髪。鋭い鰐のような目付き。そしてこのおしゃれな感じに口の悪さ!
「やだ…鼻血でそう…!でもいい!子鰐にならなにされても!」
「ふざけんな!テメーなんざ願い下げだババァ」
「ババァ!?私ババァ!?まだ20過ぎだよ!」
「おれから見ればカビ生えたカラカラババァにしかみえん」
「それ世の中の大半がカビ付きババァだよ…」
小さくなってもクロコダイルはクロコダイルだった。か、変わらなすぎるでしょ…!
ああっでもさ!まだクロコダイルに左腕があるんだよ健在なんだよ!しかも顔の傷もなくて肌スベスベ(たぶん)
「ハァハァ…やばい私目覚めそう」
「なんなら永眠させてやろうか」
「見た目は子供!中身は暴君…じゃない大人!」
グダグダくだらないこと考えてたら隣に座ってたハズの子鰐に押し倒された。ってエェーッ!?ちょっ、マジやめて!本気でそっち系に目覚めちゃうから!
あわわわっ…私の上にのって得意気にニヤリと怪しく笑う子鰐…イイ!ていうか私よりも子供でしかも男の子のくせになんでそんなに色気があんのッ!もうこんなの拷問だよ鼻血出るわッ!
「子鰐ちゃん…!私マジやばいー!」
「子鰐ちゃん言うなカス」
「そんな姿で罵らないでー!もう死んでもいい…」
「本当に救えねー野郎だな…」
その呆れ果てた顔…写真におさめたいよぅ。なんだろう、クロコダイルという存在はフェロモン永遠製造人間なのか?
「…みさき」
「は、はいッ?」
あまりにも子鰐が眩しくて視線をそらしていたら名前を呼ばれた。吃りながら返事をするとおでこに柔らかな感触…アッー!チューされた…!おでこに!
「…子鰐ちゃん」
「…ンだよ」
「さっきまで暴君だったのにずいぶん可愛いことするんだね…!」
「黙れブタ野郎…!」
なんか気に障ったらしくまだ鉤爪じゃない左手で殴られた。
あからさまに照れてるクロコダイルも可愛いなぁ…。
こうして何故か子鰐になってしまった彼と弄り弄られる1日は終わった。次の日には元に戻ってしまっていて残念だったけど、とても貴重なものが見られたのでよしとしよう。