ときとして許される暴力

まあやっぱりね、女たるもの華の道くらい極めてないとね!てことで最近華道にはまっているのだけど、やってみればこれが案外おもしろくてね。女性としてハイスペックになった今。もう能なしとは言わせないぜ。


「見てよクロコダイル!」
「また花か。能なしにしては飽きもせずよくやるな」
「…タイトルは干からびゆく鰐です。まあ実物もそうなればいいですけどね」
「花活けてるくせに、タイトルのセンスが皆無だな」


なんだこの鰐、素直にほめるということを知らんのか?照れてんのか?あまりの出来栄えに真逆のこと言ってしまう病気なのか?病院に行け、病院に!


「ほらよく見て!」
「おいやめろ…!茎が目に突き刺さってる…!」
「なんなら眼球の奥で見てみろ」


ぐいぐいと顔に花を押し付けていたら必死の抵抗と言わんばかりにやめろ!と顔をビンタされた。ちなみに私は思いっきり吹っ飛んだ。こ、こいつ…!ベッドの中にダイナマイトぶっこんで吹っ飛ばしてやろうか…!


「もういいわ、鰐にはレベルが高すぎたんだよ。ハイスペックな私の趣味に低スペックな鰐が耐えきれなかったんだよ」
「どう見たらお前ごときがハイスペックに見えるというのか」


しかたないからクロコダイルの仕事用デスクに飾りとして活けた花を置いてみた。うーん、このシンプル通り越してただただ殺風景な部屋の唯一の清涼剤だよ。情緒のない腐りきった鰐にはいい刺激になるだろう。


「っておいちょっとなにやってんの…!」


クロコダイルもその花をしげしげと眺めていたから、ついにあのクロコダイルにも人並みの感情が…!と奇跡を目の当たりにしたかのように感動していたのに、あろうことかあのバカ鰐は花をそっと摘まんでそのまま水分を吸い取りやがった…!ええ、もちろん右手でな!


「違う違う違う!それはそういうものじゃない!なんなの、のどが渇いてんの?だったら飲んできなよ、自分で!」
「いや、喉は渇いてない。ただこの花を満足そうに眺めるまな板女が鬱陶しかっただけだ」
「嘘つけ!本当は喉が渇きすぎて今にも倒れそうだっただけだろ!ほらよく見て、目が回ってるよ」
「見れねェよ」


こいつ腹立つな。喉が渇いてたんじゃないならなんなの。おなかでもすいてたのか?耐え切れずに花をむしゃむしゃしようとしたのか?おれの右手はあらゆる水分を奪う、ってこんなところで主張しなくていいから。


「くっ…!私の最高傑作、死にかけの鰐が…!」
「さっきとタイトル違うじゃねェか」
「そんな細かいこと気にしてたらこの世は生きていけないよ、ね、死にかけの鰐さん」
「ふざけるな、おれは健在だ」
「いつになったらくたばるのやら」
「てめェをぶっ飛ばすまではくたばらねェぞ」


花もダメになってしまったし創作意欲はモリモリあるので、次の花の調達にはクロコダイルにもついてきてもらった。そういえば仕事が忙しいとか言っていたような気もするけどまあいいか。それもこれも見境なく水分啜った鰐がぜーんぶ悪い。


「おいaaa」
「なに」
「お前のようなガサツには花はむかん。泣きを見る前にやめておけ」
「夜のベッドには気をつけやがれ」




Thanks:匿名さま
Title:Rachelさま


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