今日の12位はてんびん座のあなた!面倒ごとを押し付けられてうまくいかない1日になりそう。そんなあなたにラッキーアイテム!れもんキャンディーが運を運んでくれるかも!


「起きて早々…今日は最下位か」


歯磨きをしながらいつもの習慣でテレビを見ていればなんとも不吉な言葉が聞こえた。
面倒ごとか…。そういう性分なのかなんなのか普段から面倒ごとに巻き込まれることが多いと自覚はしているものの、もしかしてそれ以上の災厄が襲ってくるのだろうか。
たしか今日は会議がいくつかと提出期限間近の書類が多々あって…。ああだめだ。どう考えても巻き込まれる。押し付けられる。

しかしこれでも立派な社会人だ。星座占いが最下位だったからって休むわけにはいかない。覚悟を決めるしかないだろう。





「案の定だった」
「あらあら…」


なんとかいつも通りの時間に昼休憩が取れるよう苦心すれば努力は叶った。ただし疲労困憊である。朝の予感がぴたりと当たったのだ。ようやく一つの仕事を片付ければ、次にはその倍の仕事が入ってくる。それを片付ければ今度は早退者が出た。もちろんその皺寄せはおれに。

この喫茶店へ来る頃にはふらふらで、もう少しだって足に力を入れたくないレベルで疲れている。これでまだ午後も乗り切らねばならないと思うと深いため息が自然とこぼれた。
これは…なんだろう。ラッキーアイテムと言われたレモンの飴を持っていなかったからなのか。
家を出るころにはそんなことすっかり忘れていたせいで、わざわざコンビニで買うなんてことしなかった。こうしてさよと話をしている最中にやっと思い出したのである。


「星座占いって当たるのかね」
「さあ、どうでしょうね。でもここまで当たったのなら、そのラッキーアイテムも効くんじゃないかしら?」
「ああ…そうかもな」


これでラッキーアイテムのみ効果無しとなったら、以後絶対に星座占いなんて見ない。そうだ、あんなものは病は気からと同じ現象だ。なぜか悪いことばかり気になってあたかも当たっていると思い込んでしまう。いや、星座占いは恐ろしいな。


「どうぞ。差し上げます」
「なんだいこれは。飴?」
「レモン味ですよ」


机に置かれたのは一つの飴だった。中身はどうやらレモン味らしい。ん?レモン味の飴ということは、つまりこれは今日のラッキーアイテムなんじゃないか?


「なんで持ってるんだよい」
「ポケットを探ったらうっかり入っていました」


うっかりでそんなことがあるのか。飴というだけならともかく味までピンポイントじゃないか。なぜそんなものを。

窺うようにさよの顔を見ても笑みをのせたままで、これはたぶんなにを聞いてもはぐらかされるだけだろう。もしかして、と思わないわけでもないが本人が何も言わないのだからすべては憶測の域の話になってしまう。


「まあありがたくいただいとくよい」
「税込100円です」
「金とるのか…!」
「冗談です」


うっかりポケットから出てきたものなんだからお金なんてとるわけないでしょう。

どこか楽しそうに弾む声を聞くと、この何の変哲もなさそうなレモン味の飴も本当に運を運ぶ代物に思えてきた。現に今、急に疲れがとれたような気がするのだから、もしかしたら本物かもしれない。


「この飴には魔法がかかってる」
「ふふ、じゃあ魔法をかけたのは私かしら?」
「…そういうことになるな」
「マルコさんが元気になりますように、って願いを込めましたからね」


今度は冗談だと言うこともなければ、まるで本当ですよとでも言うかのようにおれを見ていた。

どうして飴を持っていたのかは知らない。本当に偶然なのかもうっかりなのかもわからない。それでもさよの気遣いが嬉しいから、レモン味の飴と一緒にその優しさも受け取ろう。


「午後もなんとかやれそうだよい」
「それは十分願いを込めた甲斐がありました」






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