6 / 40
06


朝起きて隣をみると昨日一緒に寝ていた女はいなくて、ついaaaが寝ていたはずの場所を触ってみた。そこはひんやりしていて、ひょっとしたら昨日の出来事全部おれの夢でした、みたいなパターンかもしれない。そう思ったのにキッチンのほうからジュッ何かが焼ける音とそれに伴う匂いが漂ってきたのでやはり現実なのだと知る。

もとはといえば、一昨日の昼にオヤジに話があると切り出され、聞いてみると突然結婚しろとの話。正直冗談かと思ったが、相手の経歴や顔、名前まで見せられると冗談だと思えず、しかも赤髪のとこの社員だと言うではないか。なんだか政略結婚かと思った。

でもまぁ聞いた限りそこまで悪い女ではないと思ったが、如何せん若い。おれはもう30も過ぎたオッサンだ。そんな20をようやく迎えたような若い女がこんな政略結婚させられるとは…。
なんで突然結婚だ、とかそんな話はどうでもよくなった。正直めんどくさい。きっと何を言ってもオヤジは意見を覆すことはないし赤髪も同じだろう。おれもそうだが、相手の女に少しだけ同情した。


「あ、マルコさん!おはようございます」
「…おはよ」

「もうすぐ朝ごはんができますから、顔洗ってきてください」


眠い目をこすって寝室からでると、昨日の女がキッチンで朝食をこしらえてるではないか。なんという順応性に優れた女だ。


「お前、メシなんて作れたんだな」

「ひ、ひどいです!私これでもずっと一人暮らしだったんですよ!」

「そりゃ悪かったねい」


うーん。
メシを作っていることといい、この反応といい。おれと結婚したという事実はもう気にしていないのだろうか。先日、居酒屋で出会った時はこの件についてだいぶ飲んだくれていたが。


「オイ、aaa」

「なんですか?」

「…もう一度聞くが、本当に離婚届出さなくていいのかい?」


最終確認のつもりで聞くとaaaはフライパンから出る蒸気の向こうでニカッと笑った。


「いいんです!男の人と付き合ったことはないけど、結婚には憧れがあったし、マルコさんはいい人そうなので!」

「…そうかい」


とんだ取り越し苦労だったようだ。ま、これでおれの悩みもひとつ解決したわけだ。


next≫≫
≪≪prev
<<< トップに戻る


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -