04

「はい、マルコ隊長ー」

「お、わざわざすまねェな。ありがとよい」

「ふふふ、どういたしまして。はい、サッチ隊長にも!」

「マジかよ!aaaー、お前いいやつだなー!なんなら今日の夜おれんとこ来ねェか?」

「あはは、丁重にお断りさせていただきます!」


今日はバレンタインなんだけど、白ひげ一家のバレンタインは毎年大賑わい。大所帯だけあって手作りの人はだいぶ前から作り始める。渡すのだって一苦労。どこに誰がいるのか分かんないし、船も広いから全部渡し終える頃には結構時間が進んでいたりする。それでもそれが苦にならないのは、渡した時の嬉しそうな顔を見るのが好きだから、嬉しいから。

だから私は毎年このイベントに力を入れているし、大好きな行事の一つだったりする。



「ところでよい」

「なんですか?」

「その後ろについてんのはなんだい」

「え?」



そう言われて後ろをみると相当不機嫌な顔をしたエースがいた。理由がすぐにわかるのはきっと私とエースが付き合ってるから。実は彼氏であるエースにはまだチョコを渡していない。それなのにオヤジや(オヤジはいいと思うけど)他の人にチョコを渡しに歩きまわっているから、エースはそれが気に入らないんだと思う。



「早くなんとかしねェと後で痛い目見るよい」

「ははは、そうかも!」


私はマルコ隊長と軽く話をしてから自分の部屋に戻るために、挨拶をして背を向けた。もちろん私の後ろにはエースが。



「なァ、aaa」

「なあに?」


私を呼ぶエースの声は何とも情けない。そして次に来る言葉はだいたい想像がつく。



「おれの分はねェのか?」



ほらね、やっぱりきた!私の想像と違わぬ答えが返ってきて口の端が上がる。そうこうしていたらあっという間に自分の部屋についてしまった。



「エースの分?…実は、オヤジや他の隊長さんたちのチョコ作るのに必死でエースのはないの」

「はぁぁぁ!?」

「だから、ごめんね」


顔の前でパンッと手を合わせて謝る。ちらっとエースを覗き見すればそれはもうこれ以上曲がらないんじゃないかってくらい口をへの字に曲げていた。うん、その明らかに不機嫌な顔、結構好きかも。



「おいおい、うそだろ?あんなリーゼントやバナナにはあげたってのにおれの分はねェのか?」

「だって…」

「おれはそんなの認めねー!」


うわぁぁぁ!と暴れ始めたエースにさっきのマルコ隊長の言葉を思い出した。これ以上は逆に危険かもしれない。



「エース、エース」

「…なんだよ」

「うわァ不機嫌!」

「だれのせいだよ、だれの」

「ふぁい、ふぁたしれふ」

「わかってんじゃねェか」



ゆるゆると私のほっぺをつまんでいた手をおろして二人してぼすんとベッドに腰かける。隣で「あとでマルコのチョコ奪っとくか」なんて物騒な言葉が聞こえたような気がしたが知らないフリ。



「ね、エース。私がエースの分作らないなんてありえないから」

「…うそだろ」

「ほんとだし!オヤジのと悩みに悩んでエースの分を一番最初に作ったよ!」


だったらなんでくれねェんだよ、エースがぼそりと言った。まぁたしかにそう思うよね。もし立場が逆だったら私もきっとそう思うだろうし。ここで私は本当の気持ちを伝える。



「だって、みんなの前で渡すの恥ずかしいじゃん。それの一番最後の方が、その…、つ、都合がいいし…、」

「は?なんでだよ」

「だ、だからさ…!」



私の部屋で最後にチョコを渡す。そんなシチュエーションと雰囲気を考えればその後の展開うんぬんなんて容易に想像がつく。



「えーと、だから…ね、」

「あァ、わかったわかった」

「え?」

「つまりあれだろ?aaaはおれとイチャイチャしてェんだろ?」

「うっ…!」


エースに言われて言葉に詰まる。たしかにそのとおりだ。何一つ間違ったことは言っていないが、そんなふうに直球ど真ん中ストレートで言われたら、て、照れる…!
自分から仕掛けたことなのにあたふたしていると、さっきまでの不機嫌はどこへやら、エースはは優しくふっと笑って私のおでこにキスをした。



「おれも、aaaと同じだ」


そういってギュッと抱きしめてくれた。チョコのお礼を言うのも忘れずに。

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