02
「はい、マルコさん!」
「おっ、ありがとうよい。手作りか?」
「もちろん!」
数日前から何を作ろうか、どんな材料が必要か、マルコさんはどんなものが好みなのか、一生懸命考えながら作ったチョコをようやく渡すことが出来た。
お菓子作りが嫌いじゃない私はウキウキして取りかかったが、なんせ相手は長年想いを寄せている相手。
あーだこーだと色々考えすぎて逆に失敗の嵐でロクに眠る暇もなかった。今思えばハリキリ過ぎである。
「まさかaaaからもらえるとは思わなかったよい」
「えー?それどういう意味ですか。私マルコさんのに一番手間隙かけたんですよー」
「あぁそうだったのかい。てっきり他のやつのチョコ作りに忙しいかと思ったよい」
もう、それこそどういう意味なんですか。他の人からすれば少しだけ嫌味っぽく聞こえるかも知れないが、片想い中な私は自分の都合がいい方へと解釈してしまう。
でもせっかくドキドキしてたのにそのあとの「お前お菓子づくり下手そうだしなァ」の一言で少しへこんだのは気づかぬフリだ。
「マルコさんってば、今日なんか変ですよ?」
「そう見えるかい?」
「は、はい…。なんだか怒ってるような」
おどおどと呟くと、マルコさんがニッと笑った。な、なんだ…!怖い…!
「そうだなァ。aaaがおれよりも先に他の野郎たちにコレ、配ってたからなぁ」
コレ、とちらつかせたのは私が作ったチョコ。
な、なんかこれ…まるでマルコさんがヤキモチ妬いてるような……。
「マルコさん…」
「なんだい」
「ヤキモチ、ですか…?」
もう心臓が爆発するんじゃないかってくらい動いている。う、わ…!自分でいっといてなんだけど、ものすごく自意識過剰…!
「そうだ、って言ったらどうする?」
「え?」
「ったくよォ、わりとわかりやすく態度に出してたつもりだったんだが…、やっぱりaaaは鈍感だねい」
「あの、」
「おれはaaaが好きだよい。そりゃお前が他の連中と仲良くしてたら嫉妬のひとつもするだろうよい」
「えぇっ!?」
な、なんですと?
マルコさんが、わ、私を…好き…?
「マルコさん…!それは、」
「言っとくが、嘘でもドッキリでもねェよい」
さっき言ったこと本当ですか、って聞くよりも早くマルコさんが言った。
最初はまったく信じられなかったのに徐々に実感が湧いてくる。
「マルコさんのばかぁぁっ…。わたし、わたしもマルコさんが好きですよぉっ…!」
「そりゃ本当かい」
「うぅっ…!マルコさんだって充分!鈍感じゃないですか」
「充分を強調すんなよい」
はははと優しく笑うマルコさんを見てると嬉しくて嬉しくて頬が緩んでしまう。
「すき…、すき、マルコさん…」
「おれはaaaが好きすぎておかしくなりそうだよい」
俯く私を抱きしめるマルコさんの腕の力は思ったよりも優しく、それでいてどこか力強かった。