「ねぇ、秋はなんでそんなにさ」
「え?」

なぁに、と笑う彼女は他意の欠片もない。それは彼女の長所で美徳で、自分がなによりも好きなところだ。しかし、しかしである。やはり、問題だと思う。
自分は海外で多くの時間を過ごして、日本の感性とは少しばかりずれているところがある。一応は自覚しているのだ。まぁ変えるつもりは全くないけれど。

それにしてもだ。

そんな俺が問題を感じる程に、彼女は無防備過ぎやしないだろうか。純粋な好意。不純物など一切含みやしない。それは彼女の長所で美徳で、そういうところがとても好きなんだけど。

ちょっとしたミスも数を重ねれば、へこむものである。俺もそりゃあたまには落ち込むのだ。でも、俺自身ちゃんと次で挽回すればいいと解っている。なのに秋はそういう俺にちゃんと気付いていて、一人残って練習する俺を待っていたりして、なんて、可愛いんだろう。俺はやっぱり秋が好きだなぁと自覚するばかりだ。

「…待ってるなら、言ってくれたら早く帰ったのに」

俺が気付かなかったら、一人で帰るつもりだったの?
こんなに暗い道を一人歩かせたかもしれないと思うとぞっとする。

「私、一之瀬君が練習してるとこ見るの好きだよ」
「そういう問題じゃないだろー」

まったく、と怒る(ふり)をすると秋はくすりと笑った。

「あのね、私、嬉しいんだ」
「…」
「一之瀬君がサッカーしてて、土門君も一緒にボール蹴ってて、そういう二人を見れて、私、嬉しいの」

にこにこと笑う秋は、可愛い。悲しみなんて感じさせない。なのに、俺はなんだか泣きたくなった。

「一之瀬君」
「ん?」
「無理はだめだからね」

約束よ、と彼女は笑った。その笑顔を見たら無性に手を繋ぎたくなった。昔は簡単に繋げたのにね。いつの間に、そんな事さえ難しくなったんだろう。















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