よくよく笑う奴だった、と思い返す。
思い返して、思い出せるのはその程度だった。
なにも知らなかった。知ろうとしなかった。
だから駄目だった。
誰かを傷つけて、それが自分に返ってくるまで、気付かなかった。
「ごめん、な」
言いたい事はたくさんあるけれど、それはもう言えないから口を噤んだ。
手向けの花一つ持ってこれないようじゃ、ますます駄目だよなぁと苦笑して、少しだけ泣きそうになる。
好きな花も、知らない。
なにが好きで、なにが嫌いで、そういう些細な事も俺は知らなかった。
あぁ、でもひとつだけ知っている。
お前もテニスが好きだという事。
俺が知るのは、それだけだ。
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