階段の途中に座り込んだまま、気がつけば既に日が昇っており俺は昨晩からずっと握りしめていたため皺になってしまった赤い服を手に庭を目指した。
どうも血痕は落ちにくく、もし服にそれがついてしまったら、いままでの俺は間違いなくその服を捨てていただろう。ただ手の中にある服だけはどうしても捨てきる気になれなくて、慣れないが洗濯をした。(生憎、元が赤いから大して汚れが目立つ様子もなく、ささっと水通しして木に吊るしただけだが)
視界があまりにも白いから何かと思い見上げると空がひどく真っ青で、そういえば暫く城から出ていなかったからこうして見上げると空があるのは久しぶりだと感想を零す。これもすべて昨日訪れた訪問者のせいで、正直なんでこんなことしているのか自分でもよくわからない。太陽から溢れ出す光が褪せた白い肌反射し目がちかちかした。たまには日向ぼっこもいいかもしれないと木陰に移動したときだった、白い何かがチカッと視界を過った。光の反射する真っ白い服を着た何かに、俺は目を見開かずにいられなかった。

「あ、」
「おまえ…」
「ご、ごめん!黙って入ってくるつもりだったんだ。君に会うつもりは…正面からだと気付かれると思って」

壁の上から現れた彼は、あくまでも俺に会うために来たのではないと言い訳をなぞる。なんだそれ、と眉間にしわが寄った。じゃあなんでここに来たんだということになるのだが、彼がそのわけを自分から言いたがらないので直々聞いてみることにした。

「何しにきた?」
「その、昨日あげた俺の服なんだけど、あの後家に帰ったら親父に「作業着はあの一着しかねぇんだぞこの馬鹿息子!!」って怒られて、捨ててなければ返してほしいなと思ってさ」

ほんっとにわるい!と彼は頭を下げた。その様子に俺は苦笑いするしかなかった。そもそも俺がその服をずっと持っていたとして、そうすれば必然と彼は俺と会うことになるし、もし俺が服を捨てていれば城中のごみ箱というごみ箱を探さなければならないだろう。そうすれば城内の異変に気付いた俺に見つかってお陀仏。(ただしその辺に服を放り投げていたとなれば話は別だ)結局この城の主である俺に会わなくてはいけないというのに彼はどうして俺に会いに来なかったんだろう。そこまで考えてはっとしたが、これじゃあまるで俺が彼に会いたがっていたように聞こえてきて、言葉には出さなかった。

「おまえ、本当にバカだなぁ」
「…知ってるさ」

頬をぷっくり膨らませて不貞腐れた様子の彼を見て、胸がじくりと傷んだ気がした。ぎゅっと傷んだ場所を握りしめていると彼がこちらを見ていることに気が付き要件を思い出した。

「あの服ねぇ、洗っていま干してるから乾くまで待っとけよ」
「え?」
「なんだよ、その顔」
「いや…意外というか」
「…そんなに悪そうに見える?」
「とんでもない!ただ嬉しくて!…ありがとう」

お礼を言われ、むず痒かった。ああ、彼のためにやっていたのかと自分がバカらしくなった。












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