※この小説は某曲の歌詞や世界観を引用させて貰っています。 ・ロイゼロ ・中世古代パロディ ・ゼロスが天使化のため歳をとらない 煉瓦でできた家が本流だったため、赤いレンガのその家に住み始めた。初めての感触に歓喜した。リビングにある小さな窓から映る景色を偸み見ては頬笑んだ。いつも同じ風景にどこか満足していた。 お前は魔物だと、彼は叫んだ。 二二歳の誕生日から成長が止まった。二二歳となればもう成長期も過ぎ去り身長も安定してきたのだと思い込んだ。六〇年後、小学校から一緒だった幼馴染が目の前で死ぬのを俺は二二歳の姿で見送った。 俺は歳を取らなくなった。 街の住民からは忌まれ奇怪なものを見るような眼で見られた。それもそうだ、俺は歳をとらないし、なにより何をしても死なないのだ。だから必要以上に石を投げられることもなくなったし、餓死させようと企んだ村長の命令で食料店から物を買えずに数年何も食べなくても死なない。いわば不老不死にでもなったような気分だった。(それはそれであっていた。) そのたび思い出すのは二二歳の誕生日に死んだ想い人で、あれ以来涙が枯れたように出ないのだ。どんなに痛くても辛くても目の潤いが微塵も感じられないくらい。きっとそれくらい好きだったのだ、それなのに身分や家の地位の問題だけで永久の幸せを手にすることができなかった。世界は残酷だ。 それから七〇年が経って、家を追い出された。何時も座っていたロッキングチェアもお気に入りの食器たちも叩き割われ、煉瓦の家が炎に包まれた。 我に帰ったとき目の前に広がっていたのは変り果てた街の姿で、いつもパイを焼いてくれていたおばさんも隣の家の奇麗なお姉さんも噴水の前を走りまわっていた子供たちも、だれもいない。 俺は故郷を滅した。 そのあとは燃え滓になった煉瓦の家を、ただ見詰るだけだった。 次に住む家は真っ白な煉瓦の家だった。森の奥にひっそりと建つお城のように大きいお家は、一人ではとてもじゃないけど余裕がありすぎた。だから門は最初のうちに壊してしまった。もう人と群れるのは御免だと、そう思っていたのに鍵を閉められなかったのは自分への甘さや苦さからだった。 城の天辺の窓から見下ろすと小さな街が見えた。前の街とは違い、ひんそで粗末な家が数件たちならんでいるだけの街(村に近いのかもしれない)を眺め続けた。次第に豊かになっていく街を見つめる度に、杞憂が心の中に張り詰めた。 → |