「寂しかったんだろ」
その言葉は私の心に酷くしっくりと留まりました。


屈んで居た為上を見上げるような形で彼の方を向く。木陰にいても光は眩しくて、逆行で彼の表情はあまり確認できない。彼は開いたもう片方の手で俺の肩についていた埃を優しく掃うと、「ほこりがついてた」と笑うのだ。

これを恐れていたと、俺は全身から汗が噴き出る気がした。今すぐにこの場所から飛び出したかった。それでも掴まれた腕は熱いし、目の前にいる彼の目線は熱い


「さみしい?気の迷いだ。俺は寂しくなんかなかった。ここ数年寂しくなんかなかったんだ」


ロイドはクルリとしている眼をさらに見開きこちらを見詰めた。俺の口調ががらりと変化したからだと思う。仕方なかったのだ、これが俺にできる精一杯の抵抗だったから。序でとばかりに掴まれていた手を弾く。ロイドの手は行き場をなくし、しばらく宙を泳いだ。

先程まで陽気に笑っていた二人の間に大きな壁が生まれた。罅など一つもない完璧な壁。ロイドはもう笑っていなかった。眉も自然と下降していた。
俺は優越感に浸っていた。自分がロイドより長生きだからとか、ロイドの服が乾かないからだとか、そんなどうでもいいことだったり、ロイドより寂しかったんだとかそんなことを色々思い出していた。
そっか、というロイドの声に意識を戻す。

「君は俺よりずっと長生きなのか」

今度は俺が眼を見開く番だった。懺悔した俺をロイドは非難もせず同情する様子も見せなかった。かわいそうだと思わなかったのか、只単にどうでもよかったのかわからないがモヤモヤした。

「俺もっと君のこと知りたいよ」

視線が被さったとき、ロイドに曇りは感じなかった。雲ひとつ無い、無限に広がる青。しかしそれは直ぐに撤回し、あの服を着てないせいだと、そう呟いた。
宙を舞っていたロイドの手は、自身の膝の上で落ち着いていた。







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