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▼それでも俺がいいんだろ?


『へーちょー!!これから訓練の指導してくださいー!!』

「黙れ。」

『いつになったら指導してくれるんです?!』

「お前に訓練指導はしないから安心しろ」


ナマエは子供のように頬を膨らまして拗ねる。
リヴァイはそんなナマエを見向きもせず何も事もなかったかのようにその場から立ち去る。


「ナマエ……そろそろ諦めなよ……」

『いやだ!私もペトラみたいに兵長からご指導されたい!あわよくば!夜のご指導も!』

「ナマエ落ち着こ?」

『落ち着いてられないよ!だってなんで私より成績が下なはずのオルオがリヴァイ班に抜擢されてるの?!』

「うーん、ごめん、ナマエ。友達だからあえて言うよ?怒らないでね。多分ナマエのそういう所じゃないの?あと兵長に好意を寄せてるとことか……憶測だけど……」

『それってつまり私自身を大否定なわけですね、兵長……つらい……』

ペトラはため息をつきたくなったがぐっと堪えてナマエを励ますように背中を上下に撫でる。

ナマエは確かに成績優秀である。実際の壁外調査においても成果を残し、同期の中ではトップレベルである。
誰もが皆、ナマエはリヴァイ班に入るのだと信じていた。それは勿論本人も。だが、実際選ばれたのはオルオとペトラの同郷コンビだった。

ナマエはショックで兵長になぜと問いかけたが、兵長は「うるさい」とだけ返してそれは終わった。

それからナマエは事あるごとにリヴァイに付きまとう、リヴァイが嫌がろうが何しようが。
そもそもナマエはリヴァイの事が好きだった。調査兵団に入ったのもリヴァイに会うためで、いざ会えば憧れだった気持ちは恋へと変わったのだ。未だに実ることない恋へと。



『兵長……なんでこんなに好きなのに……』

ぶつくさ言いながら班長により言われた裏庭の草むしりに励む。
班長によって他の人よりも多く課せられた草むしり。班長はナマエは草むしり得意だからと言っていたが実際は兵長兵長とうるさいからほっぽり投げられただけである。

根っこから引き抜いては一ヶ所に集め、また引き抜いては一ヶ所に集める。
ぶつぶつとリヴァイへの文句を言いながら。

足音がする。どうせ班長の足音だろうと思いナマエは顔をあげずにそのまま草むしりを続ける。

近付いた足音が目の前でとまる。そして「チッ、」と舌打ちされ、ナマエは顔をあげる。


『兵長……!』

「うるさい。黙って話を聞け。」

『分かりまっ、あっ』

黙って兵長に飛び付こうとしたらリヴァイによって足払いをされ、体勢を崩す。
地味に痛くナマエは涙目になる。


「きたねぇ格好で触んな」

『なら、綺麗な格好でしてら触っていいのですか!』

目を輝かすナマエ。勿論リヴァイの答えは

「綺麗だろうが、俺に触るな」

『……兵長、で、お話とはなんでしょう』

「エルヴィンから呼ばれてる」

『団長からですと……!今すぐ向かいます!兵わざわざありがとうございます!』


パッパッと服を叩いたあと、ナマエはリヴァイに向かって敬礼をする。
無礼であり、止めろと言っても聞かない癖にちゃんとナマエはちゃんとお礼を言う。リヴァイは確かにナマエを女としては見ていないが決して嫌いと言うわけではない。成績も認めてる。だが、うるさいのだ、とにかく。
それが理由で自分の班へと移さないのだ。もちろんそれはリヴァイは一生ナマエに伝える気はしない。


『……あれ、兵長も団長室に行くんです?』

少し後ろを歩いているリヴァイに話しかけるナマエ。しかし、リヴァイは眉を潜めるたけだった。







「そんなわけでナマエ。君は明日からハンジの班へと移ってくれ」

はい、とナマエは言えなかった。エルヴィンから巨人の実験の手伝いとしてハンジの班へしばらくの間移る事を伝えられたが、ナマエは泣きそうになるのを堪えるのを必死で。

「……ナマエ。君がリヴァイの班に移りたいと思ってるのは知っている。だが、ここは遊び場ではないんだ。」

そんなことナマエも分かってる。分隊長であるハンジの班へと移れるのも光栄な事である。


『……私は一生リヴァイ班に入れないのでしょうか』

「さあ、それはリヴァイ次第だから。本人に聞いたらどうだ?」

「……チッ、このタイミングで俺に振るな」


泣きそうな顔のナマエ。今にも涙が溢れそうな瞳でリヴァイを見つめている。


「ハンジの手伝いもろくにできねぇやつは俺の班に移すことはできない」

そう言われるとナマエは、はいと言うしかなかった。
団長室から出る。リヴァイも一緒に。


『兵長はなんで私に厳しいのですか』

「お前がもっと落ち着けば手加減してやる」

『……』

「はぁ、ハンジの手伝いがちゃんと終われば訓練みてやるよ」

『本当ですか……?』

「ああ」

リヴァイは負けた。先程の涙で溢れそうな瞳をしたナマエに。

『兵長は私の事嫌いですか?』


ため息を付きながら渋々と言った様子のリヴァイにナマエは不安になる。今まで自分の想いをぶつけていてリヴァイの気持ちを考えた事などなかった。

「……嫌いではねぇよ」

『えっ、』

「大事な部下だ。それに」

『それに?』

それでも俺がいいんだろ?

なあ、ナマエ─────
リヴァイの声が空に吸い込まれる。


ナマエはリヴァイの顔を見る事が出来ず、自分の爪先を見るのが精一杯だった。



end.
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