02 境遇を重ねて
本当に、私は持田さんの何なのだろう。
持田さんとの出会いは1年前。
ありきたりな合コンでだ。
会社の先輩の女性はみんな持田さん狙い。
人数合わせに私が呼ばれた理由は、持田さんに興味のない私は安牌だということだったらしい。
持田さんのサッカー部の先輩だった、私にとっては会社の先輩の、男性側の幹事さんが私は好きだったから。
‐‐‐
「あんた、俺に興味ないってマジ?」
女性たちの盛り上がりに気圧され、御手洗いに避難する事数回。
部屋に戻ると思うと憂鬱で、廊下の奥で溜め息をつくと、後ろから声が聞こえた。
振り向けば、今日の主役。
「…すみません、あまりスポーツに興味ないもので」
こんな風に話している所を見られたら、彼女たちに何を言われるかわかったもんじゃない。
「…で、俺にも興味ないの?」
「え? はい、まぁ…」
先程つけたオブラートはいらなかったご様子。
でも、私は別の人が好きなんだから。という言葉は飲み込み、持田さんの顔を伺う。
別に嫌われても問題はないけれど、機嫌を損ねられたら面倒だ。
手を顔に当てぶははっと短く笑い、ウケる!と呟いた。
さいですか、と彼の横を通り抜けようとすると、先程の彼の言葉とは違い、こちらに視線を戻した持田さんは、心が笑っていない笑顔だった。
「あんた、幹事の先輩が好きなんだろ?」
彼の表情と雰囲気に圧倒され、何で知っているのかという言葉は上手く出てこなかった。
「お前が幹事を好きだって話、今ネタになってるから」
その言葉で私の血の気はさっと引いた。
あの人を、困らせないで…。
「お前の好きな幹事は、お前なんかに興味ないってさ」
彼はきっとそうは言わない。
妹みたいだと言う。
でもそれは確かに私に興味はないということ。
「そんな事、あなたに言われなくてもわかってます」
その声は、凛と響いた。
「それでも好きって気持ちは消えないんです。 …本気で好きだから」
時間が解決してくれるというけれど、それは何時なのかと問いたい。
この気持ちを消したいと、一番に願うのは私だ。
「付き合ってるんですから。 …私の姉と」
唯一の血の繋がった家族。
まだ高校生で甘えん坊だった私を支えてくれた姉。
それを支えてくれたあの人。きっと、両親の三回忌が終わったら、結婚する。
頭の中でめぐるのは、優しい2人の姿。
「へぇ、なかなかいい恋愛してんじゃん」
そう言って、持田さんはまた笑った。
キッと睨むと、腕を捕まれる。
「放して下さい!! 私、もう帰りますから!!」
ずるずると引き摺られ、部屋の扉を持田が開く。
「雪野さんが気分悪いみたいだから送ってく」
「え!?」
自分もそう声を出していたけれど、 周りの声がそれを上回っていた。
みんなが状況を理解出来ずに動けない間に、自分と私の荷物を持田さんは掴んでいた。
沈黙を破ったのは、彼だった。
「家知ってるし、俺が送るよ」
その言葉にかっと頬に血が上るのがわかる。
願ってもないチャンスだと心の隅で思いながら、心の中心でダメだと叫ぶ。
体が反応したのは、心の隅の声みたいだ。
「先輩、幹事でしょ?」
持田がそう冷たく言うと、また彼も固まった。
女性陣もあーだこーだ言っていたが、持田さんは一蹴した。
「サッカーに興味ある女は、セフレに出来ねーから、いらないんだよ」
そう言うと、持田さんは私の腕を引き、会場を後にした。
‐‐‐
「何ぐずぐずしてんだよ」
現実に引き戻したのは持田さんの声だった。
すみません、すぐ。と言い、目の前の食材に包丁を入れていく。
私はサッカーに興味がないから、セフレ?
一度も体の関係がない事に心で自嘲した。
本当に、私は持田さんの何なのだろう?
‐‐あとがき‐‐
まぁ出会い編でした。
持田さんの年齢っていくつ?
明記されてたっけ? (仮設定で原作時26歳としています!)
主人公は高卒就職現在20歳設定。出会い編では主人公19です。
先輩と姉は持田さんの1つ年上設定。
両親が亡くなったのは3年前の交通事故。
主人公は先輩を追っかけて今の会社に就職してます。
持田さんがまどかに抱く想いと似てて、なんか気になる → 連行 って感じ。
これから過去の話をばんばん出す予定。
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