疑似恋愛 | ナノ

00 壊してやりたい

※持田視点 共謀恋愛主人公名=まどか


イライラする。
あの、幸せそうな顔が。
上手くいっていることが気に食わない。

「おい、まどか」

「もう何年も言い続けてるけど、まどかさんでしょ、も・ち・だくん!」

ムキになって突っかかる所は、出会ってから何も変わらない。
ETUの堺のモノになっても。

マッサージ、終わったの?と聞く彼女は、やはり東京Vのフロントスタッフとして、キチンと俺達選手を見ている。

全力でサッカーに向き合う姿勢。
チームメイトの選手にわけてやりたいくらいだ。
その姿勢が、数年前に彼女を気に入った理由。

「もう仕事上がったんだろ? ちょっと付き合えよ」

「えー、今日は早く帰りたい…!」

それは堺のため?
虫唾が走る。
サッカーを追いかけないお前なんて、見たくねぇ。

「この荷物重くて脚に負担かかるんだよね」

大して重くもないスポーツバッグを指差し、ちらりとまどかを見れば、難しい顔をしていた。

「…わかったわよ、持って行ってあげるわよ!」


‐‐‐

2人分の荷物を持って歩く彼女の足取りは重かった。
普通に歩いたら、持って歩け!とキレた彼女に歩幅を合わせ、俺の足なら徒歩5分の家へ倍以上かかるんじゃないかと思う程ゆっくり自宅へ向けて歩を進めた。

「車持ってねぇの?」

「運転怖いし、お金かかるし、いらない」

ぽーんといい車買うプロサッカー選手の年俸と比べたら薄給だからねと、むくれる。

「迎えに来させれば?」

「え?…あ、良則を?」

その名前の呼び方が、彼女の特別だと如実に訴える。

「会わないのに迎えとか呼ばないよ。 良則はアッシーじゃないもん」

「は? 今日堺さんと約束があるんじゃねぇの?」

その言葉に、まどかが眉間に皺を作った。

「私、そんな事言ってないよね? 今日は家で溜まった海外サッカー観るん予定なんだからっ!!」

その言葉に、ほっと胸が撫で下ろす感覚。
堺のモノになっても、サッカーに対する情熱は消えていない。

自然と頬が緩む。

「ははっ! 面白れぇ! やっぱいいよあんた」

「はぁ? さっきから何なの?」

きっと、俺のモノになってもそれは消えない。

いっそ、堺から奪ってしまえたら。


‐‐あとがき‐‐
持田視点無理だ。
こんな感じで共謀恋愛主人公にぶつかる持田さん。
でも、略奪愛にはしません。
持田さんじゃまどかは落ちません。

次からメインストーリー。
主人公視点でいきます。




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