12 毎日会うのに知らないこと
最近、食が細く、少し疲れているように見える持田さんのために栄養のあるものをと買い込んだ食材が、私の足取りを重くする。
ようやくマンションの入り口が見えたと思うと、そこには持田さんと持田さんの特別な人がいた。
つい数ヶ月前に見た光景だが、そのときとは雰囲気が全く違っていた。
持田さんは優しく笑わないし、女性は焦りを見せながら彼に何かを訴えていた。
「ね、持田くん聞いてるの!?」
少し苛立ちを見せた女性の言葉が耳に届いた。
2人の間に何かあったのだろうか?
女性と持田さんがケンカの原因は私との同棲ではないかと思い、何でもないのだと訴えようと歩を進める。
「俺のモノにならないなら、俺の心配なんてすんなよ」
そう言い放つと持田さんは一人でマンションへと消えていった。
先ほど聞こえた台詞に耳を疑う。
持田さんの特別な人は持田さんのモノにならない?
気がつけば、1人立ち尽くす女性に近づいていた。
「あの…」
声をかけると女性は驚いた後困った様に笑って、すみません、マンション前でお騒がせしてと頭を下げた。
「持田さんと、何かあったんですか?」
「あなたは…」
持田さんと名前を出すと、女性はまた驚いてこちらを訝しげに見た。
「あの、持田さんにお世話になってます」
「あら、セフレってやつ?」
眉間の皺は深くなるばかりだった。
やっぱり、私がいるから持田さんと上手くいかないのだ。
「いえ、体の関係は一切ないんですっ! ただ、ご飯とか、家事するかわりに置いてもらってるだけでっ!」
だからあなたが心配するような事はなくて、嫌ならすぐ出て行きます。と伝えたかった。
言葉に詰まりながらもそう伝える私を女性はしげしげと眺め、ふっと笑った。
「よく考えられた食材ね」
女性は私の持つ透明な袋から覗く食材を指差していた。
「一応、サッカー選手ですから…気にしてますけど…」
「…一応?」
訝しげにこちらを見る女性に、サッカーに興味がないというと、きょとんとしていた。
サッカー選手にお世話になってるのに、サッカーに興味がないはまずいだろうか。
「…じゃあ、持田くんの脚の事も知らないの?」
その言葉に、私の脳内は白く染まった。
‐‐あとがき‐‐
時期的にはETU戦前くらい?
主人公はTVニュース見ない事がバレたね。
世間の情報を得るのはにっけーしんぶんってとこ。
基本TVは持田さんが占領して、いつもサッカー見てるから。
置いてやるけど干渉すんな、持田さんの事も調べたり気にしたりするなという、隠れた同居設定があります。
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