ネタ帳 | ナノ


HQ!! 月島A

※ツイッターの萌えるシチュエーションbotからネタを拝借です!


今日も壁のように聳え立つ下駄箱に挑む。
出席番号順に無条件に割り振られた下駄箱。
女子の中でもそんなに背が高くない私にとって朝一の大仕事。

「んー! よいしょっ!」

一番上の下駄箱に向かって勢いよく飛び跳ね、靴を押しこむ。
今日も下駄箱に華麗に吸い込まれた靴を見て満足気に笑うと、後ろからぷっと吹き出すような音が聞こえた。
振り向くと口元に手をあて人を小馬鹿にした笑いを浮かべた月島君がいた。

「あ、おはよー月島君。 何笑ってるの?」
「何って、下駄箱に靴入れただけでアンタがドヤ顔してるからに決まってるデショ」

私を見下しながら(月島君の方がずいぶんと背が高いのだから当然だけど)
鼻で笑うので、私の中の月島君の株価はダダ下がりだ。

「背の高い月島君にこの満足感は絶対分からないね! ふんだ!!」

そう言い放って先ほど靴を仕舞った下駄箱へもう一度ジャンプする。
上履きに手がかかってよし!と思ったら着地で靴下が床との摩擦を抑え過ぎて体勢がぐらりと揺れた。
こける!!

「あっ!」
「あぶなっ!」

こけるとわかっているので堅い床からの衝撃に耐えようと体が無意識に強張る。
ガンッという音が聞こえた。 …あれ?でも体はどこも痛くない?
ぎゅっと瞑っていた瞼を開ければ、真黒で。
それが月島君の制服だということに気付くまで少し時間を要した。

「つ、つきしまくん…ありがとう…」
「…そのうち、満足感と引き換えに怪我するね」
「ハハハ…」

乾いた笑いが響く中で、自分の中では心臓がバクバク音を立てる。
それはこけて痛い思いをすると思っていたからであって。
月島君の左腕でがっちり支えられているからとか、
本当に大きな体にすっぽり収まって抱きしめられてるからとか、
意地悪なのに助けてくれたからとか。
そう言うんじゃない。 断じて違う。
いや…たぶん違う。と思うに訂正しておく。
全く持って心臓が大人しくなる様子を見せないので。

しばらくそのまま動けないでいるとため息とともに「そろそろ自力で立ってくれない?」と言われ、慌てて自分の足で立つ。
何だかよくわからない興奮が未だ冷めない私とは違い、彼は何もなかったかのように下駄箱から上履きを出していた。
おさまれー心臓。おさまれー。と心の中で呪文のようにそう唱えている彼女は知らないけれど。
(想像よりも小さくて、やわらかくて、いい匂いがして。
こんな奴に欲情しそうになるなんてどうかしてる。)
と、月島は少し顔を顰めた。

彼が少し不機嫌そうな顔をしてため息とともに口を開く。

「ここ、僕にとっては凄い低くて使いにくいんだよね」

そう言って指差したのは月島蛍と書かれたネームプレートが貼られている。

「クラスで1・2を争うチビのあんたには丁度良さそうだし、交換してくれない?」
「1・2じゃないよ!!私、前から3番目!」

呆れたようにため息をつく月島君。
なんでそこに食いつくかな。と頭を抱えた。

「…交換してくれるの?してくれないの?」
「え、するする! 毎朝大変だし!」

ありがとう月島君とお礼を言うと別にとそっけない返事。
さりげない優しさ?なのかな。
とにかくだだ下がりだった月島君株価は結局だだ上がりである。

(別に、僕がほっとけないだけだし)


おわってください。

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2013/06/13 01:22

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