目を覚ました
『おーい…大丈夫ですかー?』
「………」
『なんにも反応しない…』
呼びかけても、ピクリとも動かない真っ白な男の人。かれこれ30分ぐらいこうしてるのに、おかしいよ。もしかして、この人、本当に死んでるんじゃないの?やばいんじゃないの?
「おい夏々。あんまソイツに近付かない方が…」
『はぁ!?そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!この人死んでるかもしれないんだよ!!』
「いや、まぁ…そうなんだけどよ…」
『と、とにかく!一護ん家行こうよ!お父さんに診てもらおうよ!!』
「だけど、そいつは破面で……」
『ごちゃごちゃ言わない!!さっさとこの人を運んで…』
ぱちっ
「―――誰だ貴様は」
『……えっ』
「…!!」
…え?目、覚ました?死んでたんじゃ、ない?それとも、生き返ったの?生き返ったってことは、幽霊?
死んでるとばかり思っていたから、突然の事に頭が働かない。ええっと、つまり、これはどういう事なの―――…?
「黒崎、一護か…?」
「…ウルキオラ」
『へ?』
気付いたら、一護とその人が睨み合っていて。その間にポツンと座り込む私が、ひどく場違いなんじゃないかって感じた。それぐらいに、二人が醸し出す空気は重かった。…っていうか何。二人とも、知り合いだったワケ?
『ちょっと一護。状況を説明して…』
「―――夏々。下がっててくれ」
『は…?』
私が状況を理解する間もなく、事はどんどん進展していく。一護は明らかに戦闘体制に入っちゃってるし、男の人も大きな目(あ、綺麗な色してる)で一護を睨み付けたまま動かない。どうすればいいか分からない私は、未だ座り込んだまま。なんの状況も把握できていない私に、一体どうしろと――…?
「―――存外、喧嘩早いのだな。理由が無いから戦わないと言ったのは、貴様じゃなかったか?」
ぽつりと、そう言った男の人の声は、吃驚するぐらいに落ち着いていた。黒い装束に着替えた一護に刀を突きつけられているというのに、動揺は全く感じられない。
「…お前、今度は襲ってこねえのかよ」
おそるおそるといった感じで、一護は男の人に刀を突きつけたまま尋ねた。男の人は一瞬だけ目を伏せた後、淡々とした口調で言い放った。
「俺は藍染様の命を受けたわけではない。それに藍染様は………」
「………」
「…もう、いないのだろう」
そう言った白い装束の男の人の瞳には、悲しみとも絶望とも取れない複雑な色が浮かんでいた。