進級


「あ、あった」


校舎前に設置された掲示板に貼り出されている二年生からのクラス表。A組の欄に自分の名前を見つけた。えっと、咲ちゃんの名前は…、B組かあ。別れてしまったのは残念だ。A組に誰か知り合いはいるだろうか。

しげしげと掲示板を眺めていると、何やら変な箇所を見つけた。とある一つの名前だけ花紙のようなもので囲ってあるのだ。おかげでその周りに書かれている名前が見ずらくなっている。丁寧にデコレーションされたその名前は、内藤ロンシャン。変な名前だ。誰かは知らないが、なんとも傍迷惑な野郎である。









ユニークボーイ









二年生に進級して、唯一無二の親友(やはり彼女には否定される)である咲ちゃんとは別々のクラスになってしまった。が、その代わりと言っては何だけどツナくんや獄寺や山本くん、それと京子ちゃん、黒川さんと同クラスになれた。知り合いがそれなりにいたので、一先ずは安心だ。何せあたしは大半の生徒から恐れられているから、友達が非常に出来ずらいである。相変わらず風紀委員長雲雀恭弥の舎弟という名は伊達じゃないらしい。舎弟て。

そして、早くも帰りのHRが終わろうとしていた正午前。今日は半日授業の日なので、昼休憩の時間より前に下校だ。もっとも、あたしは始業式の日であろうと普段通り風紀委員の仕事があるので家には帰れないけど。寧ろ授業が無い分だけ雲雀くんに扱き使われる時間は増える。


「そんじゃあ学級委員長、帰りの号令とっとくれ」

「おっ? おっ? もしかして委員長初のお仕事きちゃった? 責任重大? っかー、オレがんばっちゃおーかな!? やっちゃおーかな!?」

「いいから早くやらんか!」

「あらーっ!? 先生もしかしてイライラしてる!? しちゃってる!? カルシウム不足ならマイ冷蔵庫の中の牛乳がオススメ!」


この妙にテンションが高い奴こそが、例の内藤ロンシャンその人であった。明らかに校則違反な乱れまくりの制服にツンツンとした赤毛という奇抜な見た目の彼は、それはもう名前以上に変な男だ。言動がとにかくヘリウム並に軽いし、趣向がかなり独特。しかも、これまた少々変わった三人組を連れていて。ウザさで言えばツナくんの家にいるランボちゃんと良い勝負だけど、どこか憎めないところがある。まあ、彼のいるクラスにいる限り授業中に退屈することはなさそう。

ブブブブッとポケットの中でマナーモード状態の携帯が鳴る。雲雀くんからのとっとと応接室来いコールであろう。とりあえず早いとこ帰りの号令済ませてくれないかな。机の上で頬杖をついて、ゆったりと欠伸をこぼした。

――内藤ロンシャンと福引き券やぬかどこ論争を交わす仲になるのは、それからおよそ一週間後の話である。

130423
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