嘘
(会話文/※ゲイ発言あり)
「雲雀くん…。あたし、雲雀くんに隠していることがあるんです」
「へえ」
「……ちょっと、真面目に聞いてください。大事な話なんですよ」
「うるさい。話すならとっとと話せば。咬み殺すよ」
「…(ごくり)……雲雀くん、あたし……」
「………」
「あたし…実は男の子なんです!」
「…は?」
「ああああ雲雀くん! 書類にコーヒーこぼしてます! 染みが!」
「君、男だったの……」
「えっ、あ…はい」
「………世の中には、いろんな性癖を持つ輩がいるっていうからね。君が女装癖でも、まあ、いいんじゃない」
「あ、ありがとうございます…(うわァ雲雀くんめっちゃ信じてるー…! しかもなんかフォローされたし! 全然嬉しくない!)」
「実を言うとね、僕もずっと隠してきたことがあるんだよ」
「えっ」
「僕……ゲイなんだ」
「!!?? げ、げい…」
「君、男なんだよね?」
「やっ、な、ちょ(なななな何この急展開!? えっ、えっ?)」
「それなら、君のことを好きになってしまおうかな」
「ヒッ、わっ、雲雀くん顔近…ッ」
「――ミナ、」
「いっ、いやあああああああああ」
「…くッ」
「え?」
「ふ…っ……」
「………あの、雲雀くん? なんで、手で顔おおってるんですか?」
「………」
「!? ああっ、笑ってますね!? 嘘だったんですか!?」
「決まってるだろ。僕にそんな趣味はない」
「ひ、ひどい!!」
「先に仕掛けてきたのはそっちだろう」
「うっ…。でもまさか、雲雀くんがノッてくるなんて…」
「やはり君はちょろいな」
「やはりって…」
「事実さ。ああ、思い出すだけで笑えるな。君の顔、ここ最近で一番間抜けだったんじゃないかな」
「なっ…! も、もう、雲雀くん真顔で嘘つくから分かりにくいんですよ!! しね!!」
「喚くなよ、うるさい」
「あだっ、いだだだだ! お腹にトンファー押し付けるのはやめて痛い!」
――その日、雲雀くんがあんな風に笑うところを初めて見た。大きな手のひらに隠されてよく見えなかったけど、雲雀くんは一体どんな顔をして笑うんだろう。
修正 170307