私の彼氏はHS


喉の痛みと寒気、倦怠感。朝起きてみて感じたそれに嫌な予感がして熱を測ってみれば、示した数値は三十七度後半。ああー、と思わず声が漏れる。


「名前ー?お母さん仕事言ってくるわね。夕方頃に帰ってくるから」


一階からお母さんの声が聞こえて、直後ガチャンと玄関の扉が閉まる音がした。風邪ひいたって言うタイミング逃しちゃったし…。まあ、幸いにも今日は休日だ。学校は無いし一日ゆっくり寝てればなんとかなるでしょ。そう結論を出し再びベッドに潜り込む。眠たくなるのにそう時間はかからなくて、私はあっさりと意識を手放した。






「う、うーん…?」


枕元に置いた携帯から聞きなれた着メロが流れてきて目を覚ました。喉が痛い、頭が痛い、だるい。よく寝たには寝たけど、体調はむしろ悪化している気がする。なんとか携帯を手に取って画面を見れば、そこには高尾の名前があった。


「…もしもし」

『あ、名前ちゃん?あのさ、今日部活午前までになったんだけど、今ヒマだったりする?』

「…えっと、ちょっとムリかも……ゲホッ」

『ちょ、風邪ひいてね!?熱ある?何度?』

「朝測ったら37度9分だった…」

『…今からそっち行くわ。家にいるんだよな?』

「うん…」


そう私が答え終わるのとほぼ同時に通話が終了される。もう携帯を握ってるのも辛かったから手放した。喉がカラカラで水を飲まなくちゃと思うけど、一階にある冷蔵庫まではとても行けそうにない。諦めてまた目を閉じた。






「………ん…?」

「あ、起きた?」


ふと目を覚ませば、高尾がいた。手に心地良い感触があって視線を向ければ高尾のそれと繋がれていて。しばらくぽかんとしていたけど、元々赤かった顔がさらに熱を帯びた気がした。


「あれ、なんで…」

「名前#ちゃんが風邪ひいたって聞いてすっ飛んできたんだよ。ってか、玄関の鍵空いてたぜ?ブヨージン」

「はあ…。いつ来たの?」

「二時間ぐらい前じゃねーかな」

「そ、そんな前から!?」


いくら風邪をひいて寝込んでいたとはいえ、彼氏の来訪にも気付かず二時間も爆睡してただなんて…。うわあ、恥ずかしい。そして高尾が言ってたけど、無用心だよお母さん。

でも、さっきより全然体調は良い。熱もだいぶ下がったと思う。高尾が手を握ってくれてたからかな、なんてね。


「喉乾いたっしょ。ポカリあるぜ」

「ありがと」

「あと、お粥作ったから。それ食べて薬飲んで。台所勝手に使っちまったのは許してくれよな」

「うん。大丈夫」

「あ、そだ。今貼ってる冷えピタ取りかえるぜ」

「はーい (貼ってあったんだ…)」


古い冷えピタを剥がし、新しいのを貼ってくれる高尾(気持ちいい…)。次にサイドテーブルに置いてあった小さい容器を持ってくるとその蓋を開けた。ふわっと湯気が立ち上って、中から出てきた玉子粥にこくりと唾を飲み込む。レンゲを私に差し出して、高尾が苦笑した。


「お粥とか作ったことねーから正直自信ないんだけど、まあ食ってみなさいよ」


高尾の言葉に頷いてレンゲを受けとる。玉子粥をすくってみれば、ほのかにお醤油の良い匂いがした。少し息を吹きかけて冷ましてから、それを口に運ぶ。味はもう、なんというか…


「む」

「む?」

「む〜〜〜〜…」

「アレ!?なんでそんな不満そうなの!そんなに不味かった?」

「ちがう…おいしいの。すっごくおいしい」

「じゃあなんで」

「…………引いたりしない?」

「?…まあ、はい」


あああなんかすごい恥ずかしい。言いたくない。でもなんとなく言いたいような。引かないって言ったけど、これ絶対引く。ドン引く。高尾がこれを言ってくれたら嬉しいけど、私はなんていうか、こんなのキャラじゃないしさあ…!悶々してる私を、高尾はじっと見つめてくる。その視線に堪えきれそうもなくて、私はしょぼしょぼと口を開いた。


「…その、高尾が、」

「うん」

「高尾、が…」

「……」

「高尾が好きすぎて生きるのつらいいぃ…」

「え、」

「だっ、だって!運動ちょーできるし勉強もまあアレだし、い、い、イケメンだし、その上こんなに料理うまいし。あげく緑間みたいなスーパー変人とか、可愛さのかの字もない私なんかに、こんなに良くしてくれるし…」

「名前ちゃん何気に真ちゃんに失礼…」

「とにかくっ、もう…高尾がかっこいいから……ああああもうやっぱ言わなきゃ良かった!うっ、ゴホッゲホ」

「あーあー。無理しちゃダメだっての。大丈夫?」


言いながら、起こしていた体を優しくベッドに戻してくれる高尾はやっぱかっこよかった。またキュンってきちゃったじゃん、もう。腹立つ。いろんな意味で熱い頬を手で覆った。まったく、人がなけなしの勇気を使って告白したっていうのに動揺の一つもしないなんて。まあ、あからさまに引かれなかっただけまだ良いんだけど。


「まったく名前ちゃんもたまにはカワイイこと言ってくれるじゃーん」

「う、うるさいな!もう知らないっ」

「オレも大好きだよ」

「!」

「名前のことが、だーいすき」

「なんっ、な…」


ぐっと顔を寄せてそう言ってきた高尾に、ぶわあああっとさらに顔に熱が集まった。それこそ湯気が出ちゃうぐらいに。目をぐるぐるにさせている私の額に小さく口付けた彼の髪の間から覗く耳が真っ赤になってるのが見えて、照れてるのは私だけじゃなかったんだなあ、なんてぼんやりと思う。あーもう、ほんとに、好きすぎてつら――…


「…………」

「…あれ、名前ちゃん?」

「…………」

「おーい……って、え!気絶して!?ギャー!名前ちゃーん!!」




彼氏HS
(そんな君が大好きなの!)


130213

黒バス夢でした。高尾君みたいなHSKが欲しいです切実に。料理ができるかは私の妄想ですが高尾君ならある程度はこなしそうな気がします。口調分からんのだよ。back
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