blue blue sky


『ツナ、身長伸びたよねー』

「ええ?そ、そうかな」

『うん。伸びたよ』


ツナは照れくさそうに頭をかいた。もふもふのススキ色の髪の毛が、私の目線のずっと上で揺れている。

やっぱり、身長伸びたよなあ。昔は私よりも低かったのに、いつの間にか抜かれていた。

頭一個分ぐらい高い位置にあるツナの顔を見上げたら、思ってたよりもずっと大人びてて。なんだか無性に悔しくなってきて、私はぷいと顔を背けた。


「? …どうしたの?」


そう言って首を傾げる姿も、同年代の人達に比べたら少し幼いけど、やっぱり昔とは違う。


『ツナって、マフィアのボスなんだよね』

「な、なんだよ急に…!」


あの弱々しかったツナがマフィアのボスになるだなんて、誰が予想しただろう。お世辞にも頭も運動神経も良かったとは言えなかったし、それが原因なのか、消極的で、周りの人達からは「ダメツナ」なんて呼ばれていた。でもそんなツナも、今や裏社会を背負う身にまで成長したのだ。


「名前?」


昔はよく、ツナと一緒に遊んだ。ツナがチワワを怖がって泣いちゃったのを慰めてあげた。ツナをイジメた、近所のガキ大将を殴り飛ばしてやった。私とツナは同い年だけど、私はツナのお姉さんだと思ってた。

ツナが困ってたら、助けるのは私。ツナが泣いてたら、慰めるのは私。勝手にそう決めてて、それはずっと変わらないと思ってた。でも、そんなことはなかったんだね。


『…我が子の巣立ちを見送る親の気分』

「はぁ!?」

『頑張ってねツナ。私、応援する』

「ちょ、意味分かんないぞソレ!!?」


ツナのツッコミの腕は相変わらずだ。こういう所は、変わってない。クスリと笑うと、ツナが顔を少し赤くした。


「…オレさ、」

『?』

「名前のこと、絶対に守るよ」

『えっ…?』


意志が込められた真っ直ぐな瞳。昔はこんな表情してなかったはずなのに、それはとても懐かしかった。暖かくて。優しくて。まるで、包み込んでくれるような―――…

前にリボーンちゃんから聞いた。

すべてに染まりつつ
すべてを飲みこみ
包容する

それが、大空なんだって。


「名前をマフィアの世界に巻き込んだのはオレだから。だから、守ってみせる」


やっぱりツナは大空なんだって、今更ながらに思った。もう、弱いだけのツナじゃない。とっくに私のことなんか、追い抜かしてたんだね。


「あっ!こ、これは…その。名前だけのことじゃなくて、みんなを守るって意味で、別に深い意味は…!」


急に慌てだしたツナに、また自然と笑みがこぼれた。ツナも、今度は顔を真っ赤にさせた。


『分かってるよ。ツナは京子ちゃんが好きなんでしょ?』

「なっ!!……そ、そうだけど…」

『大丈夫。そっち方面もちゃーんと応援してあげるから』

「しなくていいって!!」


本当は、私ツナのこと好きだったりしちゃうんだけど。私はこれからも、ツナを守ることが出来なくなった分、ツナを応援したいから。だから、この気持ちはずっと内緒にしておくの。




私にはもう、貴方の背中を見ることしか出来ないけれど。でも、私はずっと祈っているよ。貴方が、ずっと暖かく優しく包み込んでくれるような、そんな存在であり続けることを。



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